13-1アイシテルミッツ三勇魔会談①

ーーーー ウーサー・ペンタゴン ーーーー


 我は、疲れているのであろう。


 四天王と対峙して、ジャックが重体となり、極めつけは、キレーヌ様から『勇者の教典』が役目を終え、もう勇者召喚が行えなくなったと言われたのである。


 そりゃこんな幻も見るだろう。


「ピークニック! がおおおーっ! ゆうしゃをぜーんぶたべちゃうぞ! がおがおー!」

「はーい、フラン。ミッション、コンプリートだ」


 最初は、中々に愉快な幻聴だと思ったのである。


「初めましてだな、勇者諸君。そして法皇よ。我は魔王、ジェイド・フューチャー。我も話に混ぜてもらおう」


 魔王が天幕にやってきた。


 はぁあ?

 おかしいであろう。

 夢にしても可笑し過ぎるだろう!?


 ここは人類軍にとって、最も重要な拠点であり、最も堅牢な場所なのであるぞ!


 この世界『ノース・イート』で唯一、地脈の流れが一点に収束し、それを法力化した最強の防護障壁を展開できる場所こそがここ、アイシテルミッツの丘である。


 歴代最強魔王と言われたバウアーですら、直接出向いてきて攻めきれなかった最終防衛ラインであるぞ!?


 それを、どうやって越えてきたぁあ!?


「ごっほん! 初めましてだな、勇者諸君。そして法皇よ。我は魔王、ジェイド・フューチャー。我も話に混ぜてもらおう」


 なぜ同じ事を繰り返す!?


「聞こえておるわ! 魔王ジェイド! 貴様、どうやってここに……外の門兵は……まさか……もう」

「いや、勇者と話がしたいと言ったらアッサリ通してくれたが」

「んな訳あるかぁあ!!」

「いちいち叫ぶな。腹でも減ったか? 口に合うかどうかは知らんが、手土産だ。昨日の宴の余り物だがな。料理上手のギリが作ったヤツだ。冷めても美味いぞ」

「だぉぁあれが食うかぁ!」

「美味いのに。フラン、しっかり食べるが良い」

「やたーっ! まおーさま、ありがとー!」


 しれっといるこの小娘は何だ!?

 まさか、人質!?

 慎重に対応せねば。


「誰だ、この小娘は?」

「小娘とは失礼であろう。まぁよい。フラン、自己紹介だ」


 小娘は口一杯にサンドイッチを頬張っている。


「ほぁはふぃはほぁん……」

「フラン、ごっくんしてからやりなさい。はい、お水」


 魔王ジェイド、そのノリ、保育士のつもりか?


「ぷはーっ! えっとね、じこしょーかいするね!」


 小娘は翼を広げた。鱗も見える? 龍の鱗!?


「新たな四天王、フラン・ハミンゴボッチでつっ。特技は、フランに触れる物、そのしゅべてを腐食・腐敗させるものとなっておりましゅ。この力、まおう様の思うじょんぶん、振るっていただければと思いましゅ」


 ハミンゴ……ボッチ!?

 ドランの親族か!?


「フランよ、それは我にやった自己紹介であろうに。だが、四天王の追加は素晴らしいぞ」

「フラン、ひゃくてん? フラン、てんさい?」

「フランは天才だぞ。ドランもきっと褒めてくれるだろう」

「パパも!? やったぁー!」


 ドランの娘ではないか!

 それも新たな四天王だと!?

 力は……くっ! ドランと同等だとマズイ!

 ジェイドだけならまだしも、ドランの娘までとなると、『時』で停められるか!?


「む!? まおーさま、みぎてと、かおしかうごかなくなった。たべさせて。あーん」

「しょうがない。ほら、あーん」


 この娘、我の『時』で全てを停められない!?

 と言うかジェイド、なぜ貴様は動けている!?


「さて、法皇キレーヌ、あと『月』の勇者よ。狸寝入りしていないで起きよ。これは夢ではなく現実だ」


 はっ! そう言えば、ヤケに大人しいと思ったら、我に丸投げして寝たフリしていたと言うのか?


 我もそうするべきだったのてある!


「ば、バレてしまっては仕方ありませんわね」

「死んだフリで乗り切れないかなーって、てへっ」


 なぜバレないと思ったのか。

 熊ではないんだぞ。

 まぁその気持ちも分からんでもないがな。


「我の用件は、人類側からの主張を聞いておきたい。この一点だけだ」


 は? なんだこの魔王は? 人類側の主張だと?

 何の?

 しかもそれを聞いてどうする気であるか?


「知っての通り、我はつい最近『ノース・イート』に召喚された。いきなり戦争だ。なぜ? 原因は? 我は何も知らん」


「魔族がいきなり襲ってきたからでしょう!? 何を今さら!」


 キレーヌ様が食って掛かる。

 良いぞ、もっとやれ。


「我の代からは、襲っていない」

「それで今まで殺された同胞達が報われるとでも?」

「それはこちらも同じことよ。憎しみを絶ち切れとは言わん。しかし、どこかで止めねば、連鎖は続く。今がそのチャンスだと思え」

「ふんっ、そんな前例、ある訳無いでしょう」


 いや、キレーヌ様。それはこちらの世界ではないだけで……。

 ん?

 まさか、魔王、貴様は……。


「我のいた世界ではな、過去に世界を二分する大戦があった。その敵対していた国同士、完全に憎しみが消えたかと言えば嘘にはなるが、現在は強固な同盟として、商売の取引相手として、互いに高め合う存在として今日も続いているだろう。我がいた時でさえ、数十年はそうしていた」


「数十年……争いのない、平和を? ふっ、嘘ですね。さすが魔王、甘言がお上手だこと」


「キレーヌ様。魔王の言うことは本当です」

「そうですよ。私のいた『日本』と……」

「アメリカと言う国の話だ。やはり『月』の勇者は、我と同郷のようだ」


 やはり『地球』出身か。それも『日本』と来たか。


「えぇ!? 魔王なのに、日本人なの!?」

「威厳ってゆーのが大事みたいだからね。普段は魔王っぽく振る舞ってるよ」


 魔王の口調が、ガラリと変わった。


「めっちゃフランク!? え? どこ出身? 私、山口」

「僕は広島だよ」

「お隣さーん! ウサちゃん! 私、魔王とお隣さんだった! どうしよう!?」


 我は、頭が痛くなってきたのである。

 逆に言えば、敵対の道を選ぶと、地球の現代の知識をフル活用される。


 結果、帝都への一撃か。


 納得した。


 ならば、確認だ。


「分かった。では、こちらも日本人のジェイドとして、今は話そう。我はウーサー・ペンタゴン。好きに呼べ」

「じゃあ、ウーサーで。あ、もちろん僕もこんな喋りは今ここだけだからね」


 調子が狂う。

 だが、こいつの方がもっと狂っている可能性がある。油断はしない。


「まず、確認する。仮にの話だが、人類軍と戦争を再開するとなった時だ。その際……」

「容赦しない」


 即答か。

 躊躇はしないのか、と揺さぶるつもりだったが、効果は無いな。


「理由を聞かせてもらいたいのである」

「僕が生きている間、この停戦協定を破棄することはできない。つまり、そっちが約束を破ることが前提になるでしょ? 約束を破る人類と、僕と仲良く暮らし、共に支え合う魔族。どっちを守るかなんて、言う必要ある?」


 もっともな理由だ。


「女子供も容赦無くか?」

「もちろん。そうしないと、こっちの女子供を守れない」


 狂っているかと思ったが違うようである。

 覚悟がある。

 そして、頭の回転が速い。


 では次の手である。

 キレーヌ様がこちらを見る。

 何かあるようだが、その目線を見ると、我と同じようである。

 任せてみるのである。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

冒頭

キレーヌ:これはきっと夢( ˘ω˘)スヤァ

ルナ:あったかいお布団で私は寝ています。この体は幻。本体は夢の中。

ジェイド:(お疲れだね。もうちょっと寝かせてあげよう)





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