12-1『殺』と『時』と『月』の勇者
ーーーー ジャック・ザ・ニッパー ーーーー
殺して良いヤツは殺す。
殺しちゃいけねぇヤツは殺さねぇ。
殺すのはダメ?
なんでだ?
法律で罰せられるからだろ?
法律には従うに決まってんだろ。
法律ってのは抑止力で、法を犯すのは割に合わねぇ。
でもな、魔族を殺しちゃいけねぇ法律なんかねぇよ。
襲ってくる連中を殺す。
どこが悪いんだ?
殺さなきゃ、殺されるんだぞ。
殺されないにしても、全てが奪われるんだぞ。
戦わねぇのは自由だが、戦わねぇことで大事なもんが奪われても、文句言うんじゃねぇぞ。
でもな、俺様が、殺されたって、文句は言えねぇ。
俺様だって、それなりに、魔族を、殺してきたからな。
しゃぁねぇだろ。
俺様が、人類で、1番強ぇんだ。
力が有り余ってんのも考えもんだな。
地球じゃ、惨めなコソドロの餓鬼で、1日を生きていくだけが精一杯で、アレだけ世間を憎んで、力を欲していたってのによぉ。
そんな俺様は、死んじゃいねぇが、生きてもいねぇ。
全ては『時』の力。
いっつも、てめぇにばっか、尻拭いさせて悪ぃな。
しばらくは、ここで、休ませてもらう。
ーーーー ウーサー・ペンタゴン ーーーー
新たな魔王に、救われたのである。
痛み分けだと見れなくもないが、敢えて言おう。
魔王に救われたと。
我らは確実に、全滅していたのである。
最古の四天王にして最強の龍、ドランと刺し違える形でな。
アドバンテージで言うなら3-1交換が通常のレートと言われている。
勇者3対し、魔王が1である。
その勇者を四天王ごときに失うなど、歴代勇者としても恥でしかないのである。
だが、恥であろうが何だろうが、生きていれば勝ちである。
それにしても、今回の魔王は色々とおかしいのである。
四天王や魔族の変異から、人型の悪魔かと思っていたが、あの口振りと思考回路、悪魔ではなく人間なのではないか?
バウアーの時と違い、人類に対する狂おしいまでの憎悪をまるで感じん。
キレーヌ様ですら、ここまで大人しい魔族は初めてと言っておられたのである。
やはり、今は何らかの変遷期。
急いで解明せねばならんのである。
我が『時』の力も強いとは言われるが中途半端であるからな。
対個人戦では負ける気など更々無いのだが、如何せん複数となると弱いのである。
しかも。
レギュレーション違反とかで、こちらの世界に来る際に、こんな幼い娘の姿に変えおって……。
我は32歳のピッチピチのおっさんだったのであるぞ。
夢にまで見た『時』を操る力が、こんな幼女で使えて何の得が……。
くぅ!
絶対許さんのである。
絶対、何としても、その正体を暴いてやるのである!
『勇者の教典』め、首を洗って待っておれ!
ーーーー ルナ・ティアドロップ ーーーー
ウサちゃんが、瀕死のジャッくんを頭の上に浮かべながら燃えています。
私達は、今、ある丘へと向かっています。
そこに、キレーヌ様が防衛陣地を構築してくれているようです。
本来なら魔法でサクッと移動すれば良いのですが、大掛かりな移動は魔力消費が大きく、検知されるとマズイみたいなので、最小限の魔力で徒歩移動です。
ちなみに、私の力は『月』から魔力を無限に補充できることです。
この世界に『月』は無いんですけどね。
どこからか、魔力を補充しているようです。
でも、恥ずかしいセリフを言わなきゃなので、できることなら使いたくはありません。
四天王と戦った時は別です。
命の方が大事です。
魔法少女に憧れた時代は確かにありました。
でも、高校生になって、これは無いんじゃないかな? と、私は思います。
もっとも、高校生だったのは日本にいた時の話。
私の名前は『月乃雫』。
今は、『月』の勇者です。
ウサちゃんも、ジャッくんも、地球から来たのは間違いないのですが、どうも時代が違うみたいです。
ジャッくんは20世紀後半くらいのイギリスです。
ウサちゃんは20世紀末くらいのアメリカです。
私はもっと最近です。
まだまだ謎だらけの『勇者の教典』です。
きっと、まだ何かあると踏んで、ウサちゃんとキレーヌ様は、情報を交換し合っていました。
今回も、何かあるようです。
あ、防衛陣地が見えました。
キレーヌ様が、馬に乗って出迎えてくれます。
「ルナ! ウーサー! ジャック! 無事で……いや、ジャックは……どうなっておる?」
200歳とは思えないその若々しい笑顔は、ジャッくんの様子を見た瞬間曇ります。
「ジャックは、まだ無事です。ドランと刺し違えましたが、命は取り止めています。ただ、高位の治癒魔法でなければ、治療は難しいかと」
「四天王ドランか!? ふむ、高位の治癒魔法士は今おらぬ。すぐに法国に手配しよう。詳細は明日聞く。まずは体を休めよ。なぁに、ここは世界で最も堅牢な防衛陣地。帝都を滅ぼしたあの一撃さえも、ここであれば防ぎきろう。ではまた明日な」
優しくて、頼れるお姉さんな感じがして、私はとても好感が持てるキレーヌ様です。
でもですね、ウサちゃんをして、幼女で良かったと言わしめる凄まじい男欲です。
「おのれ魔王ジェイド。我が将来の伴侶の1人を傷物にしてくれおって……。必ず、必ず助けてやるからなジャック。助けた暁には、礼として……ぐへへ、期待しておくぞっ」
キレーヌ様のアイドル顔負けの素敵なウィンクに、ジャッくんが、コロ……して……と言っているように見えなくもないですが、応援してあげましょう。
がんばれっ!
そうして1日が経ち、三勇者と法国の法皇との会談が始まりました。
開口一番、キレーヌ様はとんでもないことを言われました。
「まずは最重要事項を伝えておく。『勇者の教典』が、その役目を終えた。もう勇者を失っても、勇者を召喚することはできぬと思え」
私は、勇者がどうのということは、今までよく分からなかったけれど、そんな私でも、後がなくなったということは理解できました。
頭を抱えるウサちゃん。
これから私たち、どうなるんだろう?
そんな時、予想の斜め上どころか雲の上くらいにこの場にふさわしくない者が、招いてもいないのにやってきました。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
勇者も魔王も地球出身?
地球出身が多いだけで、別の星からも居ます。
異世界の環境に対応できることが最低条件であるため、地球出身者が多い設定。
法国の法皇キレーヌ様、初登場かな。
お綺麗な人ですよ。
独身の方、オススメですよ?
キレ:ʕ•ӫ̫͡•ʔガルルル……
Norin:エサの時間はマダデスョ
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