12-0魔王様、任命する
重体のドランのことを諦めかけていたけれど、フランの力で、ドランが生還した。
それでなんやかんや有り、正直言って見るに耐えないレベルのドロドロ度合いで、ちゃんと人の形をしていなかったフランが綺麗な皮膚の少女になった。
と、思ったら、突然のドラン引退宣言。
しかも後継者にフランを指名。
さすがの僕も展開の速さについていけてないね。
「ドランよ。どういう意図を持っての発言か、説明せよ」
だからドラン自身に説明してもらうよ。
「かしこまりました。まずは、私が勇者の力で重症を負い、戦線復帰が不可能になったと思わせることです。これにより、フランが勇者の呪いを潰せたことを隠蔽することができます。フランを後任とすることで、より印象付けができましょう」
戦略的に、とても有りだね。
「その様子だと、まだ他にあるようだな。申せ」
「フランの力は強大でございます。それこそ、勇者の力を潰せる程に。将来の四天王として十分な素質かと。よって、フランには『幼龍』の段階から四天王としての業務と世間を教え、力のコントロールを身に付けさせたいと思います。それまでは、私が補佐として、陰から支えましょう」
引き継ぎもしっかりやると。
ふむふむ。良いんじゃなかな。
「そして、フランが十分育てば、私はそのまま内政にも入れます。ミシェリーの総司令としての業務や、ギリの人事の業務の補佐も、今よりも可能かと。当然、何かあれば私も前線に出れますぞ」
なーるほどー。
うん、僕としてはすぐに、採用したい案だ。
「ミシェリー、ギリ、ノウン。皆の意見を言え。お前達の考えを聞きたい」
でも、一応付き合いはみんなの方が長いんだから確認しないとね。
「私は賛成です。ドランが隠居と言うのは、一時的に人類軍が盛り上がるでしょうが、フランの力はそれ以上。その力を示せばすぐに人類軍は鳴りを潜めます。制御する者がいないなら反対ですが、ドランやジェイド様がおられるので、賛成です」
え? 僕?
フランの遊び相手ならできると思うけど、教育はドランに任せるよ?
チラッとドランを見る。
とてもニッコリしている。
「あたしはどっちでも良いよ。と言うか、特に変わんないよな? ドランって、元から四天王業務、『龍鱗』のせいでそんなに出来てなかったし、フランを表に出したいなら、ドランの副官にすれば良いだけだしなっ」
ノウンの説明が分かりやすい。
なぜかミシェリーとギリが拍手している。
「だが私は反対だ。今、ノウンが言ったように、フランの実力は十分だが、ドランを退かせる必要性を感じん。勇者どもを威圧するなら、ドランが壮健であることを喧伝すべきだろう。抑止力と言うなら、そちらの方が上だ。私には、ドランが魔王城に引きこもり、ジェイド様に何かしようとしているとしか感じんな。そう思われても仕方ない」
なるほどね。
ドランもぐぬぬと言っているから割りと図星な面もあるのかな?
「ドランよ。歴代魔王に遣えて何年になる?」
「二代目魔王のブレッドツー・サークルウォッチ様の亡くなる寸前からですので、おおよそ800年かと」
なっがっ。
そういや、僕って何代目なんだろ。
まぁ良いや。
「あと、フラン。お前は四天王、やりたいか?」
本人の希望もちゃんと聞かなくちゃね。
「んー、フランは、パパといっしょがいい。でも、まおー様のおやくにたちたい。してんのーだと、すぐ、おやくにたてるから、してんのーがいい」
おっけー。
「ドランは長年の功績により、そしてフランの意志により、フランを新たな『四天王』に任命する。しかし、ドランは『四天王補佐』としてフランが一人前になるよう常日頃からしっかりと教育するように。よって、我の傍付きの任から解く。ことあるごとに我のところに来ているが、もう来なくて良いぞ。何かあればテンテンやフーリムに言うように」
僕よりフランを構ってあげてね。
ドランは半端ない勢いで膝から崩れ落ちたように見えるんだけど、お願い通りにしたんだから、嬉しいんだよね?
フランがドランをよしよししてるけど、僕の対応間違ってないよね?
ミシェリーも、ノウンも、ギリも、ニッコリしてうんうんと頷いている。
良いよね? 僕の対応、あってるよね?
「新体制への移行準備はお前達に任せる。移行期間は
どうせ軍事関連は丸投げだしね。
「しかし、まず先にやることがある」
そう、僕がやらなきゃ誰がやる的なことが1つある。
なぜかみんなが緊張した面持ちで僕を見つめる。
フランなんかプルプルしてドランにしがみついてるし。
僕は怖くないよー。
「ドランが無事ということは、実質的な勇者戦の勝利であろう? ドランの快気祝いを兼ねて、勝利の宴を催そうではないか!」
「「「「おぉっ!」」」」
一斉に感嘆の声が上がる。
「では速やかに支度を……」
「テンテン! 関係各所に伝達! 予算は……まぁまぁあるわ。1度の宴で尽きる程じゃない……んんんん! やるでぇ! 場所は魔王城庭園やぁ!」
「食材費が経費で落ちる……つまり、作り放題! 新作をいつやるか? 今しかないだろう! ふはははははは! 私は先に料理長のところへ行く。料理の方は……ふふふ、覚悟しておくが良い!」
「あたしがちっちゃい頃やったやつ……キラキラの飾り付け、賑やかな音楽……あの頃のヤツより派手にやんなきゃなっ! そっちは任せなっ!」
「では私はミシェリーの手伝いを……。150年ぶりですな」
「パパ、うたげって、なーに?」
「みんなで楽しいことをやることですぞ」
「フランも、やるーっ!」
うん。僕のこと、そっちのけだね。
まぁ良いか。
みんな楽しそうだし。
たまには、こんな日もなくっちゃね。
僕は、庭園で催された宴で大いに騒ぐみんなを眺めながら、優雅にワイングラスに口を付けた。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
2代目魔王の名前、初登場。
ブレッド→○ン
2
サークル→○
ウォッチ→見○
ちなみに、ジェイドまでの代、全ての魔王の名前はすでにあります。
その内、名前は出てくるよ!
尚、ジェイドは未成年ですが、異世界だし魔王なので飲酒は可能……ですがコンプライアンスの問題もあるため、ワイングラスの中身はぶどうジュース。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます