11-2魔王の忠臣

ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 死の間際から、娘の力で息を吹き返すドラン。


 そして、今まで互いに触れるだけで大ダメージやから抱擁すらできんかったのに、ジェイド様の力で初めて親子が抱き合う……。


 なんやこの感動スペクタクル。


「ひぐっ……ぁえぐっ……良かったなぁ、ドラン。良かったなぁ、フラン」


 こんなん涙ポロポロになるん決まっとるやろ。


 ん?

 目の前にティッシュ箱や。


「必要ならお前も使うが良い、ミシェリー」


 気が利くやん。

 ギリも目が真っ赤やけど。

 ノウンなんて鼻水もズビズバやけどな。

 ってティッシュ10枚も持ってくんやない!

 経費とは言えもったいないわ!

 そもそもそんなに使えんやろ……って顔全体抑えて鼻チンするんかーい!

 まぁええわ、その気持ちも分かるし。


「ノウンはともかくとして、ギリも感動するのね」

「ふんっ、なんだかんだで、この四天王とも付き合いが長いからな。特にドランは最古参。お前も世話になっただろう? 私もそれなりに世話になっているし、フランの事情も知っているからな。それに知らなくてもだ。ジェイド様を見てみろ」


 早口でペラペラと、典型的な照れ隠しやん。


 で、ジェイド様がなんや……て!?


「ジェイド様の目にも涙っ!?」


 変な格好しとって目元しか見えとらんけど、冷酷無比で作ったような微笑みしかせぇへんジェイド様が、涙っ!?


 あ、ドランとフランが離れよった。


 ジェイド様も帽子とエプロンみたいなの脱ぎ脱ぎしよーる。


「うんうん、ドランが無事で良かったよ。フランも、良かったね」


 ん? ジェイド様?

 小さな独り言のような声やったけど、今のジェイド様の声なん?


「して、フランよ。痛みは大丈夫か?」


 あ、いつものジェイド様や。

 ウチの気のせいやったんかな?


「パパとのだっこ、いたかったけど、とちゅーから、いたくなくなりまちた! ジェイドさまのせいです! ありがとーっ!」

「ごふぅっっ!」


 あぁ! フランがジェイド様に頭突きと鯖折りを!


「これこれ、フラン。ジェイド様のせいではなく、ジェイド様のおかげ、ですぞ。申し訳ございません娘が……ですが幼い娘ですので」


「いや、ドラン! 止めなさい! ジェイド様がフランの『腐乱』で……ッ!?」


「良い、ミシェリー。これくらい何とも無い。フラン、途中から痛みが無くなったと言ったな? ふむ……ステータス・フルオープン」


 ジェイド様は不意にステータスを強制開示された。


ドラン・ハミンゴボッチLv1000

『魔王四天王』『龍王』『魔王の忠臣』『称号喰らい』『全属性最大強化』『物理・魔法耐性特大』etc

力:80000(Max) 魔力:70000(Max)


フラン・ハミンゴボッチLv900

『幼龍』『孤高』『腐乱』『全属性最大強化』『物理・魔法耐性特大』『力・魔力常時相互変換』『力・魔力相互変換時限界突破』etc

力:65000 魔力:65000


ジェイド・フューチャーLv1952

『魔王』『全属性魔法使用可』『錬金術』『全テヲ砕ク者』『木?魔法(装填中)Lv1952』『星ノ眼』『???技?Lv1952』『??新?Lv850』

力:10(防御貫通) 魔力:10000(+1000000)

感情ステータス:謎は全て解けた


 いや、なんやねんその感情ステータス。

 もはや感情やないやん。


「なるほど、やはりドランに『魔王の忠臣』が付いているな」

「感激の……極みでございます。恐らくは、今しがた付与されたのでしょう。ジェイド様、ありがとうございます」


 ドラン、それ頭下げすぎてもう土下座やん。


「フランも! フランも、パパといっしょがいい!」

「ふーむ、ドラン。どのようにすれば、この称号をフランに授けられるだろうか?」


 ドランは、すちゃっと立ち上がり、フランに何か耳打ちしよる。


「うん、わかった! ジェイド様、だっこして!」

「良いぞ。ほらっ!」


 ええなぁ。子どもは気軽にジェイド様に甘えられて。

 ってちゃうわ!

 なんで溶けへんの!? なんでジェイド様フランに触って大丈夫なん!?


「ジェイド様に、フランの、ちゅーせーを、ささげます。ちゅっ!」


 フランがジェイド様のほっぺに、チュー!?


 あ、ノウンが真っ白になっとる。


 はぇ!?


 フランのステータスが……。


フラン・ハミンゴボッチLv900

『幼龍』『魔王の忠臣』『腐乱』『全属性最大強化』『物理・魔法耐性特大』『力・魔力常時相互変換』『力・魔力相互変換時限界突破』etc

力:65000 魔力:65000


 変わりよった。『孤高』が消えて『魔王の忠臣』になっとる。


 ん? フランの体が……。


 爛れた皮膚が通常になり、穴だらけの翼が修復される。

 手も足も、腐りかけていた部位が全て元の……普通の、裸の、女の子になってもーた。


「そうか、今まで服を着ても腐るから着ていなかったのか。では……錬金術……起動。簡易な服で悪いが、とりあえずはこれで過ごすが良い」


 ジェイド様の力で、フランに薄い水色のワンピースが着せられる。


「フランの……からだ……いたく……ない。おめめも、みえる……つばさも……もどった。ぱぱ……ぱぱぁ!」

「はい。フラン、もう、あなたを縛るものはありませんぞ。今まで、本当に、苦労をかけましたな」


 フランと、ドランが、抱き合っとる。

 今回、ジェイド様は治癒魔法をかけとらん。


 ドランの『龍鱗』も、フランの『腐乱』も、効果を失っとる。


 どゆことなん?


『魔王の忠臣』の称号って、そんな効果なん?


「聞いたことがないぞ……スキルを打ち消す称号だと? まーたこんの魔王は訳の分からぬことを……」


 ギリも混乱してギリギリしよーるわ。


 そこに、ドランは、二言ゆーた。


 一言目。


「ジェイド様、これにて、私は、四天王を引退させていただきます」


 二言目。


「私の後任には、フランを、どうぞ……よろしくお願い致します」


 これにはウチらだけやなく、ジェイド様もあんぐりと口を開けとった。


 ジェイド様も、ウチらと一緒なんやって知れて、ちょっと安心する一幕やったわ。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

幼龍ロリに不幸は似合わない(フラグ)

フラン、これから幸せになるんだよ(フラグ)

家族みんなで、仲良くね(フラグ)


あれ? おかしいな。

この3本のフラグ、中々折れないぞ?

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