10-0魔王様、見つける

 昨日は丸1日フーリムに授業をしていた。


 そのせいか、今日は熱を出して寝込んでいるらしい。


 いきなり根を詰め過ぎたようだ。

 反省。


 僕は魔王城の庭園で、優雅にティータイム中だ。


 みんな忙しくしているのに、僕だけこんなことをしていて良いのだろうか?


「ジェイド様、忙しい時こそ、余裕、大事」


 そんな僕を見てか、テンテンが声をかけてくる。


 昨日は珍しく1日姿を見せなかったが、今日は朝からベッタリだ。


 ニコニコ笑顔がとても眩しい。


 誰が作ったのかは知らないが、口に入れるとすぐ溶けるマカロンを頬張る。


 うーん、美味しい。

 地球で食べてたヤツより美味しよねコレ。


 腹ごしらえをしたところで、僕は仕事をしようと思う。


「さて、では起動しよう。『星ノ眼』発動」


 謎スキルばっかりだけど、このスキルはちゃんと使えるんだよね。


 どういうスキルかって言うと、簡単に言うと衛星カメラ。

 人工衛星ならぬ魔法衛星で、空から地上を俯瞰できる。

 しかも倍率すごいの。蟻も見えるんだよ。

 さらに、副眼を4箇所設置できる。


 偵察し放題、やったね!

 まぁ屋内は副眼を送り込まないと見れないんだけど。十分過ぎる性能だ。


 魔王なのに偵察専門って言うのはどうかと思うけど、情報戦も重要だからね。

 これで僕も少しは役に立てるぞ。


 まずは、魔王軍の最前線、ヤーバン帝国に行ったらしい四天王の様子を見てみよう。


 ヤーバン帝国の第一首都って、法国が近いんだよね。


 世界の南側が人類軍の国なんだけど、西から王国、法国、帝国って並んでて、領土が▽▲▽って感じに三角形で並んでおり、右の三角形の左上の方に首都があるから、王国ともかなり近い。


 その帝国と法国の国境沿いに、四天王は揃っていた。


「探すだけで、すごく、時間かかる、けど、一瞬……さすが、ジェイド様」


 ちなみに、テンテンとも視界を共有できるオプション付き。

 みんなを見付けたのは偶然だったけどね。


『帝国領から、法国を見るとこんな感じなんだなー。攻めやすそー』

『帝都を落としたは良いが、下手をするとこの地の奪い合いになりかねん。協定のせいでこちらから攻められんからな。戦闘になればこちらが不利か』

『いえ、見通しがとても良いから、ここらに防衛陣地……要塞を建てましょう。幸い魔石の余剰は十分だし、資材も帝国から徴収できるわ。資材の提供と引き換えに現体制での自治を認めてやりましょう。今のところ、こちらが何も要求しなさ過ぎて不安になっているみたいだから』

『不憫なものですなぁ。ジェイド様の恩情をそのまま受け入れるだけで良いですのに』


 わぁお、音声まで聞こえるよ。

 僕の声は聞こえるのかな?


『それが人と言うモノよ』


 自然に会話に混ざってみる。


『あたし、疲れてんのかな。ジェイド様の声が聞こえた』

『ハッハッハ、気のせいだ。こんな最前線に来られる訳が無いだろう。私も聞こえたが気のせいだ』

『これが終わったら、みんなで休みましょう。有給休暇、連続3日取りましょう。バチは当たらないわ。ジェイド様も許してくださるはずよ』

『しっかり休むが良い』

『ほらね。……2徹のせいかしら』

『ジェイド様の私達を想う気持ちが届いております。あぁ、ありがたき幸せ』


 うん、僕が喋っても現場を混乱させるだけだね。

 しばらく見守ることに……ん?


 僕は遠くに3人の人影を見つけた。


 副眼の1つをそこに配置する。

 ロン毛の男、ランドセルが似合いそうな片括りの少女、ロングサラサラヘアーの高校生くらいの女子。


『な、なぜ四天王がここにいる!? 最前線だぞ!? いや、だからこそか! おのれジェイド、我らの手をどこまで読んでおるのだ!』


 少女は大人びた口調で悔しがっている。

 僕が読んだのって『魔本』くらいなもんなんだけど。


『ねぇ、ウサちゃん。やっぱり私達だけで皇帝の安否確認なんて無茶だよぉ』

『ウサちゃんゆーなっ! ルナよ、ちゃんとウーサーと呼べ!』

『おい、ウーサー。ヤツら、こっち気付いてねぇんだろ?』

『……イケるのか? ジャック』

『一匹だけならな。殺して良いんだろ?』

『もちろん、殺して問題ない。だが、私が封じられるのは2体だ。誰を止める?』

『焔帝と龍王だ。俺は魔導師を仕留める』

『魔導師を止めなくて良いんだな?』

『その方が確実に殺せるが、どっちかフリーにした瞬間、俺様達全滅じゃね?』

『それもそうである。ルナ、お前は1体で良い。すぐに準備して、止めるのである』

『どーして私には命令系!?』


 え? なにこの物騒な連中。

 でも、テンテンは知っていた。


「ゆ、勇者! 3人! 全部、いる! 四天王、危ない!」


 僕は嫌な予感がした。


 だから、全力で、叫んだ。


『勇者が見ているぞ! 3人だ! 即座に撤退し、態勢を整えよ!』


 僕は即座に僕に与えられた高速飛竜に命令し、現場へ飛ばした。


 僕は現場には行かない。

 少し迷ったが、僕にしかできないことがあるはずだ。

 だから、やれるだけの準備を行った。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

ノース・イートの三勇者、始動。

始動した直後に、集結した四天王と出逢う。


勇者よ、気持ちを述べよ。

「「「ク○ゲー!」」」

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