6-1四天王、喜怒愛楽

 昨日のことだった。


 ジェイド様の策略により、軍の撤退を行っている最中、ホラーク山脈方面が光り、爆煙を上げ、衝撃波が微弱ながら広範囲に届いたと報告があった。


 ワイバーンモバイルシステムにより、何が発生したのかは理解できた。


 理解はできたのだがーー。


『ジェイド様の一撃で、先日崩落したソクシ山が消し飛びました』


 こんな報告、誰が信じるのだろう。


 本当にそんなことがあったのか、あったとしたらどうやって、今後の魔鉱石採掘はどうなるのか等々を話し合うべく、四天王は謁見の間に集結していた。


ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー


「ドラン、もう一度、ノウンにも分かるように説明してくれるか?」


 これで3度目だが、何度聞いても信じられん。

 情報量が多過ぎて頭に入らんぞ。


「繰り返しになりますが、簡潔に……。

・ジェイド様と崩落したソクシ山の視察に。

・ジェイド様が山を爆破。

・巨大な魔鉱石が砕け、大量の魔石を入手。

以上となります。3文で説明させていただきましたが、これ以上簡潔にはできませんな。ノウン、どうですか?」


「すげー分かりやすかったっ! でもどーやって山ごと魔鉱石砕いたんだよ?」


「ですから、私はその爆破で負傷しておりましたので、詳細は分からないのです」


 そこだ。何度も聞いたが、そこが分からなければ何も分かっていないに等しいのだ。


 怪我はジェイド様が治したと言うが、ドランだぞ?

 最強の龍だぞ?

 レベル1の魔王にその高防御力を抜かれて傷付けられる?

 それも対魔性質もあることから治癒魔法すら受けにくいのに瀕死から完治しただと?


 最強の魔法使いと自負している私ですらドランに対してそのようなことはできん。勇者でも『龍』とか『癒』とかでもなければそれは不可能だ。

 そんな奴ら、過去にはいたが、今はいない。


 つまり、普通に、それは有り得ん。


 ドランは、何らかの嘘をついている。


 こう見るのが確実なのだが、どこに嘘があるのかまるで分からん。


「埒が明かないわ。そこで提案なのだけれど、ジェイド様をこちらにお呼びして、直接話を聞くのはどう?」


 魔石の話が出た時から目が血走っているミシェリーが提案してくる。

 その顔で普通に話されると正直やりづらいのだが、この際それは良しとする。

 しかしだ。


「仮に今の話が本当だとしてだ。恐らく、ジェイド様の本質を突く話になる。お呼びしたとして、ノコノコとこの場に出てくると思うか? それ程の信用を得ている者が、この場にいるとでも?」


 まだ顕現されて3日だぞ?

 警戒されていて当然だ。

 私なら断固拒否してーー。


「私がテンテンを通じ、こちらにいらっしゃるようお伝えしております。四天王、連名とさせてもらっておりますので、間も無くこちらに来られるでしょう」


 なにぃ?

 私の名を勝手に……いや、結果呼び出しに成功すれば良いのだが……ん?


「テンテンとは誰のことです? 聞いたことの無い名ですが」


 ミシェリーの言う通りだ。私もミシェリーも全ての者の名を把握しているが、そのような者は聞き覚えが無い。

 名を持つ者がそれ程多くないのだから、忘れることも有り得ん。


「テンテンとは、サキュバスの姫ですね。ジェイド様が名付けられたようです。インキュバス王子にも、シッシと名付けられておりますね。『魔王の忠臣』と言う称号を付与されておられました」


 なんだと!?

 忠誠心のある者への名付けを行うと『○○の忠臣』と言う称号が与えられる。

 ここでは『魔王の忠臣』となる。

 称号の付与には他にも条件があるようだが詳しくは分かっていない。

 この称号の効果は今のところ確認されていない。

 だが、デメリットが存在する。


 名付けた者に、ステータス一部半減(永続)や、成長率半減(永続)等の強烈な『呪い』の状態異常が付与される。


 大抵は死ぬ間際に礼として名付けを行うことが多いのだが、名付け親が消えればこの称号は消えるので、称号持ちと遭遇すること自体が珍しい。


 しかし良いことを聞いた。


 ジェイド様には、すでに永続バッドステータスが2つ付与されていると言うこと。


 ん?

 いつ名付けた?

 まさか名付けた後で、ソクシ山を爆破した?


 そんなバカなことが、あってたまるか!


 早く来い! 魔王!


 すると、扉がバンっと開いた。


 ジェイド様が来られた。

 その小さき体からは想像も付かぬ重厚な足音を響かせ、階段を上り、玉座に腰を下ろす。


 顕現された時と、雰囲気がまるで違う。

 なんだ、このプレッシャーは。


「それで? 我を呼び出して何用か?」


 用件が、伝わっていないでは無いか!?


 くっ、ここはミシェリー、お前に譲ってやろう。


 せいぜい、成果を出すが良い。



ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 ギリが失礼な眼差しを向けてきよるけど、まぁええわ。


「ジェイド様が、とってもすごいことをやってくださったそうで」


 ウチは今、かつてないレベルで歓喜しとる。

 だってそやろ?


 ここに来て窮地にあった兵站、褒賞問題が解決一歩手前まで来とるんやで?


 大量の魔石、どれだけあるんか知らへんけど、ウチに任せてもらえさえすれば、かなりの足しに……ちょっとでもあれば……でへへ。


 おっとっと、あかんな。

 口元が弛みっぱなしや。

 ジェイド様の前ではええ子にしとかんとな。

 最近寝不足やったけど、明日から寝られるよーに頑張ろ。

 でも頑張り過ぎてドン引きされても敵わんもんなー。


「テンテンより聞き及んでおられると思いますが、昨日のソクシ山爆破の件です。事の顛末をジェイド様からも確認させて頂きたいと思いまして……その……」


 とにかく、スマイル。スマイル攻めや!


「我からも? つまり……ドランからすでに聞いたという事だな? ドランが知る以上の事は無い。我からは以上だ。ドランの言い分を第一にせよ」


 なんかジェイド様の声震えとらん?

 ウチ、がっつき過ぎたかいな?

 それか、まずは昨日のソクシ山爆破の処理からってことなん?


「ドランの話はすでに聞かせていただきました。しかし、不明な点がいくつかありましたので、そこをジェイド様に確認したいのです」


 あーん、ギリが横槍入れてきよるー。

 まぁええわ。

 どっちにしろ聞かなあかんことやし。


「良いだろう。好きに申せ」


 ジェイド様もこう言っとることやしな。


 するとノウンがとっても軽いノリで手を挙げよった。


 自分から何かゆーの珍しいやん。

 まぁ、ノウンも一枚噛んどるからな。

 好きに言わせたろ。


「じゃ、はいはーい。あたしでもちょー頑張ってヒビしか入らない魔鉱石を、どーやって破壊してんですか?」


 そうやなー。

 魔鉱石ってそもそも爆破魔法効かへんのに、爆破されたゆーんがおかしいもんな。


「でも、難しい話はよく分かんないんで、ジェイド様、とりあえず殴り合いしよっ?」


 うん、せやな。

 殴り合えば分かるもんな、ってアホー!

 ジェイド様に殴りかかるって、んなことしたらジェイド様死んでまうわ!


「慌てるな、ノウンよ。ステータス・フルオープン」


 いやジェイド様も慌ててくれへんと、ん?



ジェイド・フューチャーLv1001

『魔王』『全属性魔法使用可』『錬金術』『全テヲ砕ク者』『???技?Lv1875』『??新?Lv800』

力:10(防御貫通) 魔力:10000(+100000)

感情ステータス:余裕


 はぇ?

 ジェイド様、レベル1000超え?

 ってか、1000超えることあるん?

 ってか、一昨日レベル1やったよね?

 ってか、称号スキルも追加されとるやん。


 しかも力の数値、10は分かるんやけど、防御貫通って何?

 そのまんまの意味やったらヤバいどころや無いで。

 ジェイド様の前では防御無効ってことやん。

 魔力も+100000って、条件付きやろうけどギリの魔力超えるやん。


 せやな、分かるで、ギリ。

 ウチもあんたと一緒で、アホに見えるくらい口開けとるんが分かるわ。


 信じられへんけど、証拠その1は見せてもろーた。


 じゃあ、証拠その2。

 不屈の最強拳闘士、ノウンを軽くいてまうか、見せてもらおーか。


 がんばれ、ノウン。


ーーーー ノウン・マッソー ーーーー


 ミシェリーが拳を振りながらこっち見てんだけど、つまりジェイド様をヤって良いってことだよな?


 あたしは少し昔を思い出す。


 今は亡き母からの言葉。


『自分より強い者を主とせよ。もしあんたの全力を受け止められるやつなら結婚してバンバン子どもを生みなさいねっ!』


 前半のカッコいいとこだけで良いのに、なぜか後半のユルいシーンまで思い出しちったじゃん!


 ワリィけど、あたしは全力で行くかんな。


 前魔王、史上最強と言われたバウアー様に、あたしは負けた。

 負けたと言っても攻略されたって感じでな。


 あたしを傷付けられるヤツはそうそう居ない。

 でも、万が一、あたしに傷が付いたら、それをトリガーに覚醒する。

 即座に力の数値は倍になる。傷の度合いによって、最大10倍。100万パワーだ。


 バウアー様は、そのことを知っていて、あたしを傷付けず関節技で封じてきた。

 バウアー様には負けたから言うことを聞いた。

 でも、何度決闘しても、殴り合いだけはしてくれなかった。


 史上最強と言われた魔王バウアー様でさえ、あたしと殴り合うことを恐れたんだよ。


 ジェイド様は戦闘型の魔王様じゃないし、頭で勝てそうにないから諦めてたけど、あたしやバウアー様にできなかった魔鉱石の完全破壊を成した。


 基礎数値の上では至上最弱の魔王だと思う。


 でも、ジェイド様の称号には『全テヲ砕ク者』がある。

 つまり、そこは真実だ。


「ノウンよ、これでも、ヤル気か?」


 あたしは震えたよ。

 だってジェイド様の感情ステータス『余裕』なんだぜ?

 このあたしを前にしてだ。

 惚れちまいそうだな。


「……もちろん! ヤらせてくれよ、ジェイド様!」


 惚れさせてくれても、良いけどよっ!


「良いだろう、少しばかり、実演するとしよう」


 ちゃんと、ガチで向き合ってくれる魔王様は初めてじゃね?

 ちょーしこいた魔王様をボッコボコにしたことは何回かあるけどな。


「ノウンよ、危ないので気を付けよ」


 教えてくれるなんて親切なこって。

 魔鉱石を爆破した魔法かなっ?


 ん、そこっ! よし、掴ん……。


 あたしの、右手が、爆発した。


 痛みは未だ、無い。

 でも、鈍痛が始まり、激痛に変わる。


 いってえええええ!

 でも、久しぶりのっ、痛みっ!


「治れ」


 ジェイド様が治癒魔法をかけてくれた。


 痛みは消え、手も元通りになってる。


 治癒魔法って、こんなに性能良かったっけ?

 部下の治癒魔法見たことあるけど、こんな一瞬で治らんしょ。


 しかも、あたしの力は覚醒したまま。

 それも最大覚醒値の100万パワー。


 こんなの、理論値だと思ってた。


 やるっきゃない!


「ジェイド様、もう1回、お願いっ!」


 あたしの全力!


 ジェイド様にっ! ぶつけっ……。


 爆発した。

 100万パワーがあるということは、防御力もそれだけあるということなのに、関係ないと言わんばかりに、あたしは頭部にダメージを負った。


 それでもあたしは倒れない。


 あたしは不屈の最強拳闘士。


 あたしが倒れるのは、死ぬ時だけだ。


 紅に染まるあたしの眼。


 大量出血だな。

 このあたしが、全力でズタボロだ。

 手は届かなかった。

 それでも、清々しい気分だよ。


 まぁ、ジェイド様に2度も楯突いたんだから、このまま放置されて死んでも文句は言えない。


 でも、ジェイド様はあたしのほっぺを両手で、持ち上げるように掴んだ。


 そして、治癒魔法がかけられる。


「ノウンよ、傷付けてすまなかった。だが大丈夫だ。お前の可愛らしい顔は元通りだ。さぁ、来い。詫びだ。お前の一撃、受けてやろう」


 傷付けてごめん?

 あたしから殴りかかったのに?


 あたしの顔が何だって?

 元通り?

 可愛らしい?

 こんな暴力女が?


 しかも、まだ、殴らせてくれるって?


 あたしは、また母の言葉を、追加された状態で思い出した。


『もしあんたの全力を受け止められるやつなら結婚してバンバン子どもを生みなさいねっ! 可愛いって言われたなら、尚更よっ! あんたも好き好き大好きくらい言いなさいっ!』


 なんで、今こんな時にこんなの思い出すんだよっ!


 こんな暴力女、かわいくねぇのはあたしが一番分かってら!


『でも、あんたのこと可愛いって言ってくれた人は、だーれ?』


 って母ちゃん! 成仏しとけよ!  憑依してくんじゃねぇっ!


『良いから良いから。だーれが、あんたを、可愛いって言ったのかなー?』


 うぅ、ジェイドさま。


『そうそう、ジェイド様が、あんたを、かわいいって、言ったのよ』


 確かに、あたしを、かわいいって、ジェイド様、言った。


 あたしは、あたしは、あたしはああああああ!


 ジェイド様に背を向け、階段を下りる。


「ガチで惚れたなんて、ぜってぇ言わねぇかんなっ」


 ああああもうっ!


 顔が熱い! 耳も熱い! 体も熱い!


 ドラン! パスッ!



ーーーードラン・ハミンゴボッチーーーー


 私達は、何を見せられていたのでしょうか。


 ノウンがジェイド様に殴りかかったかと思えば返り討ち。

 治療されて尚も殴りかかり、返り討ち。

 再び治療され、今度は殴りかけて踵を返し、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに戻ってくるその姿。


 惚れた男に屈した、ただの乙女でございます。


 不屈の最強拳闘士も恋には勝てないようですな。


 ノウンがそのような顔をするとは、私、少し感激しましたぞ。


 ギリやミシェリーは、目が点でございます。


 どれ、では、私が、見せつけて差し上げましょう。


「ジェイド様のお力、披露していただき感謝の言葉もございません。して、確認なのですが、この大量な魔石、どのように致しましょう?」


 私は指を鳴らし、部下に荷車いっぱいの魔石を運ばせます。

 その数16台。


 ギリの目は先程よりも点が小さくなっておりますな。ギリのこんなアホ顔は滅多と見れますまい。

 ミシェリーに至っては目が魔石になっております。

 ノウンは……そっとしておきましょう。


「魔石は兵站だけでなく、普段の食事・配給にも使われているだろう? 古い物は魔力の質が落ちると聞く。必要な予備分を残して交換せよ。ある程度のサイズがあるものは褒賞とし、先の大戦の功労者や遺族への補填として使え。だが、最優先は鉱夫長ヒデオ・ラッシュ以下の鉱夫だ」


 さすがジェイド様です。

 こと財務等の内政に関しては、ミシェリーやギリと同等かそれ以上の知恵をお持ちですな。


「だ、誰の一存で決めていきましょうか?」


 ミシェリーの息が少し荒過ぎるようですが、それだと意図がバレましょう……。


「もちろん、ミシェリー。お前に一任する。総司令なのだから当然であろう? 任せたぞ」


「はひぃ! お任せあれぇェィェェッスッ!」


 ミシェリーがはしゃいでいるにも関わらずお咎め無し。

 それどころか顔色一つ変えぬとは、ジェイド様のお心の深いこと深いこと。


「お待ちください! この魔石の所有者は、魔鉱石を砕いた魔王様自身にあります! 安易にミシェリーに預けて宜しいのでしょうか!?」


 ギリの言葉にやや怒りを覚えましたが言わんとすることも分かります。


「待ちぃや! ギリ! ウチが不正なんかする訳無いやろ! 絶対無いわぁ!」

「絶対無い、と言い切れる方が怪しいな」


 案の定喧嘩となりましたな。

 ジェイド様の御前だと言うのに。


「分かった。ではギリよ。お前を監査役に任命する」

「は? 監査役とは?」

「監査役とは、監査役なのだが……んー、ミシェリーの配分決めの監査をせよと言うことだ。何か問題があれば我に、ギリが、報告せよ。その報告に問題があれば、我が直々に対応する形になる。もちろん、ミシェリーで決めかねる案件があるなら相談にも乗ろう。以上だ。他に何かあるか?」


 さすが、ジェイド様ですな。

 これにはギリも納得せざるを得ないでしょう。


「グッ……監査役、承りました」

「ジェイド様の恩賞が広く知れ渡ることを主とし、魔石配布を執り行いたいと思います」


 此度はミシェリーに軍配が上がりましたな。

 では、私からも。


「では最後ですかな? 私からジェイド様に、よろしいでしょうか?」


 厚かましいとは自覚しておりますが、抑えきれませぬ。


「昨日の補償の件だな?」

「そうです、褒賞の件です」


 少しニュアンスが違うような気がしましたが、どちらでも変わりますまい。


「ジェイド様、手をお借りしたいと思います」

「我の手を?」


 ジェイド様のスベスベの手。

 何の躊躇もなく、私に差し出してくださる正に神の手。

 私が唯一触れられる他者。


 私は、幸せでございます。


「ドランよ」

「はっ!? 不快でございましたか?」


 私としたことが夢中になりすぎておりました。

 それはそうでしょう。

 このような老体の身で遠慮なくベタベタと触られては、普通に嫌悪されましょう。


「いや、むしろ心地好いくらいなのだが、これだけで良いのか?」


 なんと、お優しい言葉。

 私を泣かせる気ですかな?

 歳を取り過ぎて涙腺が弛いのでご勘弁を。


 ギリが何か言いたいようです。どーぞ。


ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー


 何を考えているのか。


 ドランは褒賞? 補償? どっちか分からんが、ジェイド様の手をニギニギと……。


 ドランに触れると『龍鱗』によるとんでもないダメージを受けるはずだろう?


 なぜジェイド様は何ともないどころか心地好いと言えるのか!?


 それにジェイド様のステータスだ!


ジェイド・フューチャーLv1001

『魔王』『全属性魔法使用可』『錬金術』『全テヲ砕ク者』『???技?Lv1002』『??新?Lv800』

力:10(防御貫通) 魔力:10000(+100000)

感情ステータス:リラックス


 色々とおかしいが、リラックスとはどういうことだ!?

 ドランの龍鱗ダメージはマッサージとでも言いたいのか!?

 名付けのバッドステータス表示もない!


 どうなっているうううう!?

 こんのチート魔王めぇええ!


 もうダメダメだ。頭が回らん。

 ここ数日ろくに食事も摂っていないからな。

 豪華なディナーで英気を養い、それから対策を考えてやろう。

 まずは食材集めのための有休申請だ。


ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 あかん、ギリがショートしおった。


 頭から湯気出とる。


「まぁ良い。手ぐらいいくらでも触れ。他にも我ができることなら何でも申せ」

「では近い内に私の背中にお乗りいただいても宜しいので?」

「ふむ、魔王領の遊覧飛行か。悪くない。だが、数回に分けねばならんな。負担にはならぬか?」

「望むところでございます」

「ではその件はドランに任せる。予定を組み次第報告せよ。他にも何かあれば申せ」

「かしこまりました」


 ツッコミどころ満載やけど、追い付けんわ。


 しかも、ドランとジェイド様、ラブラブに見えるんやけど、気のせいかいな?


 まぁ、遊覧飛行で各地を回ってもらえるんは総司令として願ってもないことなんやけどな。


 いちおー、ドランにもスケジュール回しとこか。


「ノウン、あんたも一緒に回れるよー手配しとこーか?」


 こっそりノウンにも耳打ちしたろ。


「ぶぁっかじゃねぇのっ! べっつにジェイド様と一緒じゃなくて良いしっ! 行きたきゃ勝手に現地で待っとくしっ!」


 現地に行くんかーい。


 まぁ、ちょっとシャクやけど、ノウン弄りがしばらく捗りそうやから良しやな。

 これでノウンも少しおしとやかになってくれればええんやけど。


 四天王と魔王の恋物語。


 んー、売れるな。


 ドランでもノウンでも、どっちでもアリや。


「以上のようだな。では、執務室へ行く。用事があれば訪ねてくるが良い」


 ジェイド様が部屋を出る。


 さぁ、呆けとる3人はほっといて、魔石の分配パーティー開催や!

 でへへ!


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

喜び:ミシェリー、自転車操業からの解放

怒り:ギリ、魔王への道が更に遠退く

愛:ノウン、チョロイン

楽しい:ドラン、言うまでも無し

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