3-0魔王様、名前を付ける

 翌朝、魔王の部屋のベッドで目が覚めた。


 あれからすごく眠くなったので、さっさと寝ることにしたからね。


 四天王と仲良くなろう作戦は、ぶっちゃけると成功した。


 と言うのも、スキルが1個増えたのだ。

 おかしな話ではある。

 まだ自己紹介とステータスオープンしかしていないのにね。

 システム的に、仲良くなった扱いをされてしまった。


 ちなみに、増えたスキルは『魔王の祝福』。

 僕のスキルを他の魔族と共有できるらしい。全部は無理みたいなんだけどね。

 そもそも、そんなにスキル持ってないけど、役に立つのかな?


「おはようございます。ジェイド様」


 僕のお世話をしてくれることになったサキュバスのお姫様。


 僕にテンプテーションが効かないから、社会勉強のために侍女をやらせてくれってサキュバスのお妃さんからお願いされたよ。

 テンプテーションって何? ってお妃さんに聞いても、またまたぁ、オホホ、とか言われて誤魔化された。

 意味は知ってるよ? 僕が知りたいのは効果だったんだけどなぁ。

 まぁ、それはその内ってことにしておこう。


「おはよう、サキュバスの姫。昨日は聞きそびれたのだが、名前は無いのか?」


 僕はベッドから身体を起こした。

 そして横を向いてベッドに腰掛けるように座って、目の前で佇むサキュバスの姫に問う。


「サキュバス、名前、無い。自我あるの『妃』と『姫』だけ。他は、人類、魔族、関係無しで、精力を魔石に、変えるためだけ、生きる」


 魔物や魔族の食糧事情は、魔石から魔力を吸収することで栄養を摂取することが基本みたい。

 魔力のある肉や野菜でも大丈夫なんだけど、魔石から魔力を取り込む事が一番効率が良いらしい。

 その魔石を生産する方法はいくつかあるんだけど、その1つがサキュバス、インキュバスラインだ。


 全てのサキュバスは『妃』の意思の下で活動しているけど、たまに自我を持つ『姫』が生まれる。『姫』は次の『妃』候補として修行を積む。

 インキュバスは『王』と『王子』で役割はサキュバスと同じだ。


「名がないと不便であろう?」

「いえ、名前、呼ばれること、ほぼない。皆、テンプテーション、かけなくても、『魅惑状態』なっちゃうので、用件、命令、念じれば良い。言葉、いらない。四天王は、サキュバスの姫、それで終わり」


 なるほどね。今まで名前どころか言葉すら必要無かったと。


 でも僕としては困るんだよね。いつまで経っても『サキュバスの姫』じゃ呼びにくい。


「1つ確認する。名を与えられるのは嫌か? 我が魔王とか関係無く、嫌かどうか、正直に答えよ。これは命令だ」


 ちょっと強引だけど命令する。命令しないと答えてくれそうにないから。


「はっ、かしこまりました。嫌かどうか……うー、分かりません。名があると、どういうこと? 良いのか、悪いのか、分からない。命令、答えられず、申し訳ございません。その罪、この命、以て……」


 見えないところから禍々しい大剣が出てきた。今にも自分の首を刎ねようとしている。


「待て。首だけのお前など要らぬ。その身、全てを以て我の役に立て」

「はっ、仰せの、ままに」


 あっぶなー。命令する時は気を付けよう。

 それにしても困ったな。


 でも……。


「僕が名前を付けなくても良いって本人が言うなら、無理して名付けしなくても良いか」


 おっと、思わず口に出してしまった。


「すまないが、今の話は無かっ……」

「ジェイド様! 是非、私に、名付け!」


 急に食いついてきた!

 ベッドに押し倒さないで!

 近い! うわーお! 胸元が、うわーお!

 落ち着け、こう言う時は、さっさと相手の要求に応えるんだ!


 イメージ。サキュバスの姫のイメージ。


「テンテン。テンテン」


 昨日、僕の前ではテンテンとしか言ってなかったよね?


「テンテン、それが私の名前……。ポッ」


 え? それが名前で良いの? ウットリしていらっしゃるけど、ホントにそれで良いの?


「ステータス・フルオープン」


 僕はステータスを見せてもらうため、自分のステータスから見せる。

 姫は何も言わずに、ステータスを見せてくれた。


テンテンLv800

『サキュバス』『魔王の忠臣』『姫』『魅惑』『状態異常攻撃強化』『物理攻撃・魔法耐性特大』etc

力:10000 魔力:40000


 名前が決まっちゃったよ。

 しかも昨日と違ってスキルが増えている。

『魔王の忠臣』って何さ?

 スキルっぽくないけど、称号なのかな?

 でも、仲良くなった感じがするよね。


 よし、今後の短期的な方針は、全員にこの『魔王の忠臣』を獲得させることだ。


 それはそれとして。


「テンテンよ、良いか?」


 名付けられて嬉しいのは分かった。

 喜んでもらえて僕も嬉しい。

 しかし、そろそろ退いてもらわないと大変なことになる。

 理性とか僕の魔王様とか。


 それにやることあるし、時間的にも余裕が無い。ちょっと急がないと。


「失礼、しましたっ! ご自由に、どうじょ!」


 思いっきり舌を噛んで痛そうだ。

 耳まで真っ赤にして堪えている。


「構わん。テンテンよ、身体を大切にな」


 頼むからもう自分で首を切ろうとしないでね。


「はっ、ありがたき、幸せです!」


 そうして身支度を整え、魔王の部屋から出る。


 ここは寝室。

 これから向かうのは仕事場だ。

 何をするのかよく分からないが、『魔王の系譜』から教わった内容として、何でもやって良いらしい。


 魔王らしい仕事を、自分で探して、自分でやる。


 結構大変なことだ。


 しょうもないことをしているとバレたら、魔王軍そのものの士気が低下するみたいなので、注意が必要だ。


 遊んでいる上司の下じゃ誰だって働きたくないだろうからね。


 何しようかな。

 うーん。

 ん?


 そんな悩める僕の目の前で、インキュバス王子がセクシー? ポーズを決めて、バチコーンとウィンクしてきた。


「シッシ」


 僕はテキトーに手で払って、魔王の執務室へと向かった。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

サキュバスの姫、テンテン

イメージ:R○のサキュバス

戦闘能力、無くは無い。

テンプテーションの前には魔王すら無力(過去系)


シッシ:R○のインキュバス

イメージ:ついで(イ○メンきん○くん的な)

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