2-1四天王ノウン・マッソー【挿し絵あり】
あたしの名前はノウン・マッソー。
何言ってんのか分かんないと思うけど、あたしも何が起きてんのか訳分かんない。
目の前で新しい魔王、ジェイド様が顕現したかと思ったら、突然停戦とか言い出してネンキーン王国の奴らと成立させたって。
まだ『魔王の系譜』を読んでないよなっ?
停戦の内容はせっかく奪い取った領土を返すってもんでハラワタが煮え繰り返そうだったけど、ジェイド様の『まやかし停戦』発言をギリが解説してくれた。
「新たな魔王……魔王様は、この停戦協定そのものを我らの一方的に有利な協定に仕立てあげられた。その意味、理解している者は?」
ミシェリーは即座に手をあげたけど、ドランは自信無さげに手をあげた。
あたしはサッパリだよっ。
「魔王軍全体の士気に関わる。ドラン、YMシステムで全魔王軍に通信を。私が解説する。なーに、魔王様は『魔王の系譜』に入った。数日は目を覚まさんだろう」
ドランのワイバーンモバイルシステムが起動した。今回は音声だけだなっ。
「諸君、四天王のギリ・ウーラだ。此度の停戦協定。魔王様の真意を伝える。難しい話はせぬようにするが、疑問点があれば上長に確認し、分からなければその上にあげてゆけ」
ギリはあたしを見てくる。
あたしが一番バカだもんなっ。
だいじょーぶ、まだ始まってないんだから分からん話も無いよっ。
いつもならぶん殴ってるけど、今日だけは特別だかんな。
「この停戦協定。我らに一方的な利のある協定となった。第一に戦線を下げるとのことだが、これは一見我らに不利なように思う。しかしながら、最前線の維持にはコストがかかる。要所であれば良いが、それ以外の場所ではそうもいかん。人類軍にとって有利、魔王軍にとって不利の地形がいくらでもある。その地域を厳選して放棄する」
なるほどなー。
戦線下げる位置取りはこっちが決めるんだもんな。
「魔王様がおおよそ100kmと言ったが、平均100kmでも、一部が0でも、全てが50kmでも問題はあるまい。人類共が停戦期間を無限と言う最大のモノにしてきたならば、それくらいの要求は私ですら容易い」
さすがジェイド様。
でもジェイド様がいる限り攻められないんだよな?
もしかして準備が整ったらジェイド様を殺すとか?
「魔王様が存命の限り攻め入ることが出来ないと勘違いしている者も多いようだが、それは違う。魔王様の言葉を思い出せ」
マジで?
何つってたっけ?
「魔王様は『村にも町にも王国にも、軍勢を率いて攻め入ることはせん』と仰られた。つまり、『軍を用いた村、町、王国侵攻』のみが禁じられている状況であり、要人、すなわち勇者やネンキーン王を数名で仕留めることは問題ないと解釈できる。これは魔王軍が要所を専守できることに繋がり、侵攻程の労力を使わずに戦争を継続でき、且つ消耗の少ない極めて有効な戦略だ。それを魔王様は、まだ『魔王の系譜』を読んでいないのに……なぜ……くっ!」
ギリは、魔王様を讃えつつも苦虫噛んじゃった的な顔をしている。
「少し熱く説明し過ぎたようだ。ノウン、総括してみろ」
ギリはあたしにまとめろと言ってくる。
「ジェイド様すげー。戦争はゲリラ戦に変えて続行っ! どーよ?」
よーするに、やり方変えるだけで戦争は続行ってことだもんな。
あたしのどや顔に、みんな揃って拍手喝采。
「ノウンに分かるように説明できて良かったと思う。しかし、戦争は続行と言ったものの、大幅な戦略の変更を伴うことから、しばらくは大人しくする必要がある。無駄な争いは避けるように。最前線の引き下げ区域が決定次第、防衛陣地の設立を行い、各部隊の判断で休暇を取ってゆけ。これで良いなミシェリー?」
そう言えば総司令ってミシェリーなのにギリが仕切ってら。
いつもなら大喧嘩なのにな。
「おおきにな。防衛戦の引き直し完了やわ。確認してーな」
素に戻ってやがるけどミシェリーがギリに礼? 明日は槍でも降りそうだなっ。
「ミシェリー、また素に戻っているぞ。しかしさすが総司令、仕事が早い。ふむ、む? 一部要所が含まれているが?」
「ごっほん! 侵攻でこちらがボロボロした要塞よ。地理的にも防衛に向いていない場所だし、要塞を完全に破壊させて地下坑道を掘り、撤収させるわ。人類軍が新築したらコッソリといただきましょう」
「くっくっく、すでに仕込むか、なるほどな」
二人で盛り上がってんなっ。
邪魔しちゃ悪いかもだけど、どうする? と言わんばかりにドランを見る。
「ミシェリー、ギリ。これからどうするのですかな? ジェイド様がお眠りになった今、軍の再編もありますし、今後の……」
「魔王様への対応だな。如何せん、未知だ。『魔王の系譜』無しでこの知略。無能なら眠っている今の段階で殺すつもりだったが、この協定は現魔王が『存命の限り』続く。これ程に有利な停戦協定を早々と失う訳にはいかん」
へぇー。ジェイド様にはもうそんな価値があんのね。
「まずはだ。友好のフリでも良いからを仲を深め、必要な情報を引き出し、いつでもこちらで利用できるようにする。ステータスオープンの魔法を発動してくれるのが手っ取り早いが、歴代魔王全てが用心深かった。そして何より、『魔王の系譜』無しで前魔王バウアー様を凌ぐ強力な何か……その正体を暴き出す」
ギリ震えてら。
そりゃな。何回決闘してもあたしですら勝たせてくれなかったバウアー様を超える何かって言われたらな。
あたしも震えたよ。
「当然ハッタリの可能性もある。先程も言ったが、とにかく魔王様の全容を把握する。異論は?」
ギリの言葉に、あたしも、ドランも、ミシェリーも異論は無いという意味で頷く。いつの間にか傍に来ていたサキュバスとインキュバスもだ。
「魔王……様、目覚めそう」
サキュバス姫の言葉に、あたし達はパニクッタ。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
ノウン・マッソー
R5/7/5挿し絵追加
https://kakuyomu.jp/users/NorinAlpha/news/16817330659871645460
名前の由来? それくらい、考えなっ!
脳筋ファミリー、その①
キャライメージ、女版○國志(恋のヤツ)のちっこい赤髪。←キャラ絵で桃髪に変更。○園の誓いの子。
ノ:ジェイド様、あたしと身長一緒だっ!
裏設定、ハイパーピュア。
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