2-0魔王様、みんなと仲良くする

 やってしまった。

 夢だと思っていたけれど、夢じゃなかった。

 『魔王の系譜』が現実だと教えてくれた。


 これ、よくあるチュートリアル本だった。


 魔王や軍だけではなく、この異世界『ノース・イート』の歴史まで教えてくれた。

 人類や魔物の生い立ちは地球とほぼ一緒。

 隕石衝突で世界に魔力が満ちて魔物や魔法が生まれたらしい。


 まぁそんなことは置いといて。


 僕が転生した理由は、やはり死んでしまったから。

 最新のパソコンを前に、テンションが上がりすぎて倒れ、頭を打って脳出血でお亡くなりになったらしい。


 不憫だなぁ。僕のことだけど。

 他人事に思えるのは慣れてしまったせいだろう。

 余命1年を何度宣告されたことか。

 僕は17年しか生きていないのに10回は宣告されたことを覚えている。

 何度も何度も、家族や友達とはお別れを済ませた。

 悔いが無いと言えば嘘になるけど、もう十分だよね。


 そんな訳で、まだ『魔王の系譜』の途中なんどだけど、唯一無二らしい魔王専属スキルの選択にまでやってきた。


 最強攻撃力、最強魔法力、最強防御力、物理無効化、魔法無効化、全属性魔法使用、不老不死などなどの中から1つだけ選択できる。

 中には自力で会得できるものもあるけれど、魔王専属スキルのメリットとして、どんなステータス鑑定にも表示されないというものがある。

 つまり、最強の隠匿スキル。

 僕も見ることができなくなっちゃうのがタマにキズかな。

 普通の者ならば数日かけて悩むところだろうけど、僕は心に決めたスキルがある。


 『状態異常無効化』


 これだ。


 健康であれば何でもできる。

 どれだけ力が強く、不老不死であろうとも、その身が健康でなければ意味はない。

 健康でさえいれば、お金だって稼げるのだから、迷う余地なんて無い。


「チュートリアルお疲れさまでした。間もなく、私は役目を終え、消えます」


 抑揚のない声で、この世界についてとか、簡単な魔法の使い方とか教えてくれたり、他にも色々とお世話してくれたりした『魔王の系譜』の声の主が最後のお題を出してくる。


「最後に、魔王四天王と仲良くなりましょう。これを成せばいくつかの役立つスキルを差し上げます。それでは楽しい魔王ライフを。さようなら、また会う日まで」


 そうして、僕の手から魔王の系譜が消え、目覚めた。


 玉座の間で眠りこけていたので、転生して目覚めた時と同じ光景である。


 ただ、サキュバス姫とインキュバス王子は階段下におり、四天王と何やら話し込んでいた。


 僕は目が覚めたアピールをするため、指先で椅子の持ち手をカツンと叩き、友好の眼差しを向けてみた。


 でも、なぜか6人揃って片膝をついて顔を伏せている。


 僕、魔王だからそれっぽく振る舞った方が良いのかな? さっきみたいな感じで?


 いやいや、さっきの僕は何かおかしかった。

 いつもの僕じゃない感がすごかった。

 何か魔法に掛かっていたのかな?


 とりあえず、試しにさっきみたいな感じでいってみよう。


「眠ってどのくらい経過した?」

「ハッ! 10分も経っていないかと」


 ミシェリーが僕の質問に答えた。

 やっぱりこんな感じで接するのが良いみたいだ。

 四天王だからチャラチャラした感じが好きじゃないのかもしれない。

 ミシェリーは、不滅の焔帝という異名を持つ攻守に長けた万能キャラクターだ。

 どうして名前を知っているのかって?

 魔王の系譜が四天王の顔と名前を教えてくれたからね。

 そんな訳で、仲良くなって頼りにしていこう。


「ミシェリー、面を上げよ。他の者もだ。立って楽にして良い」


 おぉ、とにこやかに立ち上がる面々。

 緊張が解れるのは良いことだ。

 魔王と四天王なんて主従関係って言うのも窮屈だし、フリじゃなくて本当に仲良くなれたら良いよね。


「これより、我とお前達とで、友好を深めねばならんからなぁ。友好のフリ……では無いぞ?」


 しかもこれで色んなスキルがゲットできるもんな。

 おっといかんいかん、思わずニヤケてしまった。


 ん?


 どうしてガタガタ震えながら、また片膝付いているのかな? 面を上げてってお願いしたよね?

 お互いの顔が見えなきゃ仲良くなれないよ?

 困ったなぁ。


 そう言えば、『魔王の系譜』が教えてくれた中に『ステータス・オープン』の基本スキルがあったんだった。

 ステータスオープンとは、自分のステータスを他人に開示する魔法だ。

 みんなでステータスオープンすればみんなの特性も分かるし、仲良くなる切っ掛けになる。


 やるっきゃないね。


「そう怯えるな。他意は無い。その証拠だ。『ステータス・フルオープン』」


 思わずフルって付けちゃったけど大丈夫だよね?

 お?

 みんなもステータスオープンしてくれている。


ミシェリー・ヒートLv1000

『魔王四天王』『不滅』『焔帝』『火属性最大強化』『武器の炎化』『物理攻撃無効化』etc

力:50000(Max) 魔力:50000(Max)


ギリ・ウーラLv1000

『魔王四天王』『謀略』『大魔導師』『全属性最大強化』『攻撃無効化シールド常時展開』etc

力:20000(Max) 魔力:80000(Max)


ドラン・ハミンゴボッチLv1000

『魔王四天王』『龍王』『孤高』『称号喰らい』『全属性最大強化』『物理・魔法耐性(特大)』etc

力:80000(Max) 魔力:70000(Max)


ノウン・マッソーLv1000

『魔王四天王』『不屈』『拳闘士』『物理攻撃魔法化』『攻撃力限界突破(覚醒時)』etc

力:99999(Max) 魔力:1(Max)


名前を決めてくださいLv800

『サキュバス』『姫』『魅惑』『状態異常攻撃強化』『物理攻撃・魔法耐性(特大)』etc

力:10000 魔力:40000


名前を決めてくださいLv800

『インキュバス』『王子』『魅惑』『状態異常攻撃強化』『物理攻撃・魔法耐性(特大)』etc

力:20000 魔力:30000


 さすが四天王。立派なスキルと素晴らしい数値だ。

 ちなみに、人類軍の大将とかで力が30000くらいらしい。勇者で50000。もっともスキルや魔法によって変動するから、あくまで基礎値みたいだけどね。


 というか、君らサキュバスとインキュバスだったのね。

 名前がまだ無いの?

 その内つけてあげよう。


 まずは四天王と仲良くならないとね。

 あ、その前に自分のステータス見なくちゃ。


ジェイド・フューチャーLv1

『魔王』『全属性魔法使用可』『錬金術』『?????Lv1』

力:10 魔力:100


 ちょっと、弱くない?

 しかもハテナって何? このスキルだけレベル別だし。

 まぁ弱いのはレベル1だからしょうがないやつだとして……謎のスキルか。


「素晴らしいスキルだ」


 今後に期待しよう。錬金術もあるから元の世界の兵器でも作ってみようか。


 ピコーン。


 ん? なんか音がなった?


『?????Lv2』


 なんで増えたのかな?


「なるほど」


 分からん。でも色々試せばレベルはすぐに上がるみたいだ。


 さて、これらの情報を得た上で、みんなと仲良くなっていこうかな。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

ジ:へい、Norin。僕の身長は?

Norin:142cmです。体重は35kgです。

ジ:なんでちっちゃいの? 背が高くてイケメンの方が、読者は嬉しいよ?

Norin:主人公はショタ! 可愛いに限る! 可愛いは正義!

ジ:Norinの性癖なんて聞いてないんだけど……。もうだめだね。コイツ、早くなんとかしなくちゃ。

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