第3話

「ミニ・マニエ、入りなさい。」

そう言われるといつものようにバッグの中に入った。


ママがある日心を病んだ。

暫くしてパパも心を病んだ。

パパは自分が癒されるために私をバックに詰め込むのだ。


パパは私が大人しくバックに入るととても喜んでくれる。

私はパパの為だったらお人形さんにでも喜んでなれる。


一日中パパと一緒にいれる。

私はそれがとても幸せで、多少の息苦しさなんてちっとも気にならなかった。

ずっと続くように願っていた。

身体が大きくならない様に極力何も食べなかった、少しでも身長が伸びることを恐れてたし成長を呪った。

そうこうしている間にある日成長しなくなった。


私はカバンの中で揺られてる間中目を閉じてパパの幸せだけを願った。


パパは私のことは名前で呼ばなくなった。

“ミニマニエ“

いつからかパパは私をそう呼ぶようになった。

私は随分前からパパの娘でもないし、人間でもないミニマニエになっていたらしい。


私は私の鼓動を感じない。

それも随分前から。

だけどそれでいいんだ。

パパをそしてママを愛してるから。


パパは私がいる事によって暗示をかけているみたいだ。

座敷童のような願掛けのような、それで誓約を授けて自分の幸不幸を委ねてるらしい。

わたしが見当たらないとパパは半狂乱になってる。

私はその姿を見ると胸を痛めると同時に自分の存在を再確認する。


私の眼光は随分前から真っ直ぐ焦点を当てて離さない。

私の口は随分前から口角が上がって下がらない。

私の感情は随分前から何もない。

私の魂は一時も休まず燃え盛ってる。


この現実を見届ける為に。

終末を見届けるために。


悲しいかをを見ると愛おしくなる。

誇示する顔を見るといじらしくなる。


私を必要としてる、私がいなくなったらこの人は生きていけないそんな呪いもかけたの。

毎日バックの中で目を閉じながら念じてる。


その通りになるの。

だって私が見てる世界はすべて私が創り上げてるんだから。


ママが病んでくれて嬉しいわ。

ママを愛してるパパが病むのは当然のこと。

そうなったら2人が愛してあって生まれた私に縋り付くのは当然の事。


私は腐った種を植えたの。

因果応報の原理を知ってる。

腐った種からは何が生まれる?

そう、それを望んでた。


私は救世主になったの、歪な形の。

どんな代償でももちろん払うわ。


どんどん吸った、もう生きる気力がなくなるくらい。

ついには美味しくいただいたわ。



もう寂しく無いの、私になったんだから。

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夢日記 仁瓶 龍雅 @akira_97

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