第5話 アウト!! おしまい (8月31日)

 今日は自転車ではなく電車に乗った。

 明日からの通学のために定期券を買いに行ったついでに、電車に乗って隣の駅までやってきたのだ。

 定期券を見せて改札を出るとアカシヤ書店に向かう。


 店の前から中を覗くと、それに気づいた茜が外に出てきた。

「それじゃあ、行こうか」

 茜を連れて駅へと向かう。

 俺の学校の有る駅に二人で向かうのだ。

 改札の内側で、茜が切符を買って改札で切符を切ってもらっているのを待つ。


「オーイ、直ぐに電車が来るぞ」

 二人でホームの陸橋を渡って普通列車に飛び込む。

 行く先は二つ先の急行の停まる駅だ。

「ねえ、本屋の娘を連れて本屋巡りってチョットひどくない?」

「仕方ないじゃないか。今月号探すんだろう」


 駅前の3階建ての大型書店に二人で向かう。

「あっ、なかよしだ。別マも出てる…って、あの本何? あの表紙絵モー様だよね。あんな雑誌初めて見るんだけど」

「おい、マンガ少年を探すんじゃなかったのかよ」

「待って、待ってよチョット。何この本。”LaLa”? 10月号? 先月から月間化してたんだ。花ゆめとは別になったんだ」

「おい、何言ってんのか分からないんだけど」


「すみませーん! この本先月号は残ってませんか? えー残ってた! 二冊とも買いまーす」

 なんか茜が暴走してるっぽい。

「ありがとう、片桐くん。おかげでいい本が買えたよ。一日遅かったら返品されてたところだったよ」


 結局、茜に押し切られて俺も”マンガ少年”を買わされた。

 早々に読みたがるので、茜と一緒に喫茶店を探す。

『純喫茶 街の灯』

 そんな看板の店に入る。


「俺、レーコー」

「じゃあ私はレスカをお願い」

 アイスコーヒーとレモンスカッシュを頼むとお手拭きで手を拭きながら本屋の袋を開く。

「はじめは交換して読まないか?」

「オッケー、じゃあそっちを見せてよ。でも少女漫画も読むんだね」

「妹がマーガレット買ってるからな。マンガ少年もラインナップ見ると面白そうだな」

「でも、定位購読は私の店でお願いよ。その代わりこれからは花ゆめとこのLaL a貸してあげるから。文庫本ももうあの店で買っちゃ駄目だよ。うちに注文しなさい。気になる作品はすぐに注文するからね。それから月に一度は私をあの本屋に連れてって、決まりだからね。本屋の娘として売れ行きの傾向を把握する必要があるの」

「…はい」


 新学期から何やら面倒くさい事になりそうだ。これからは茜に振り回されることに成るのかな。

 道路の向こうでこっちを指さして何か話してる奴はクラスメートの落合と岸田じゃねえのか。クラブの帰りかなあ。

 きっと学校で彼女が出来たとか噂が広まることに成るんだろうなあ。

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