第31話 落下

 ふわりとした浮遊感。気がつけば、足元に何もない。俺たちがいたはずの場所に突如、ぽっかりと空いた大穴。


 とっさに叫ぶ。


「俺に、つかまれ!」


 俺も腕を伸ばす。手が何かに触れる。シジーの腕のようだ。俺はぎゅっとそれを掴む。

 同時に背後から、俺の服が引っ張られる。テルトナとミリサリサのようだ。

 そして始まる自由落下。


 ちらりと背後を見るとテルトナとシスター・リニも互いに手を繋いでいるのが見える。


 周囲は何も見えない。とても巨大な縦穴を落下しているみたいだ。その時だ。シスター・リニが叫ぶ。


「アズルマイカ!」


 シスター・リニの伸ばした腕の先に人影。変わったシスター服をきた、シスター・リニより少し若そうな女性だ。どうやらシスター・リニの知り合いらしい。必死に宙をかくシスター・リニの腕。

 シスター・アズルマイカは、少し離れたところで俺たちと同じように落下している。当然、シスター・リニの腕は届かない。


「ばうっ」


 ガルナタタンが吠える。

 俺はその意思を読み取ると、ガルナタタンにかける。


「頼む、ガルナタタン!」

「ばぅぅー」


 次の瞬間、ガルナタタンの足元に拳大の風の渦のようなものが現れる。


 ──魔法、火の玉だけじゃなかったのか!


 ガルナタタンがすいすいと、空中を泳ぐようにシスター・アズルマイカのもとへとたどり着くと、その服の端を咥える。そのまま、服を引っ張ってこちらへと戻ってくるガルナタタン。


「ぐえっ。ぐ、ぐるじいです」


 何か聞こえるが、気にした様子をみせないガルナタタン。その足元では風が渦巻き、ぐいぐいとこちらへと近づいてくる。


そしてついに伸ばしたシスター・リニの手が、シスター・アズルマイカに届く。


 ガルナタタンがあとは任せたとばかりに俺のもとへ。


「ばうっ」

「でかした、ガルナタタン」


 自由落下は続いていたが、ちらりと底らしきものが見えてきた。


 ──今度は、俺の番だ。


 俺は急いで片手でステータス画面を開くと、残ったお祈りポイントを表示させる。


 ──これに、かける!


 俺は手を叩きつけるようにして、お祈りポイントをすべて幸運(小)へと使用した。



【後書き】

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