第14話 スライムゼリー

 俺は結局、広場のベンチに座ってシスターのリニを待っているところだ。

 隣には、なぜかテルトナも座っている。面白そうだからと一緒についてきたのだ。リニも、テルトナが話に参加するのを歓迎している風だった。リニとテルトナは、幼なじみらしい。


 礼拝堂の近くの広場にも屋台が出ていて、それなりに行き交う人も多い。点々と並べられたベンチには半分ぐらい人が座っている。


「こういう場所の方が機密性の高い話をするには向いているんだけど。リニの悩み、深そうだねバクシーさん」


 ぼーと周囲を見ていた俺にテルトナが話しかけてくる。例の直感が働いているようだ。

 俺が返事をする前にリニが戻ってくる。


「こちらをどうぞ。はい、テルトナにも」

「あら、スライムゼリー。ありがとう、リニ」


 嬉しそうに受けとるテルトナ。俺も大きめの何かの植物の葉に包まれた物をリニから渡される。


「スライムゼリー?」

「はい、このように食べるのです」


 リニが俺の隣、テルトナとは反対側に座りながら、食べ方を伝えてくる。

 さほど大きくないベンチは三人で座ると少し窮屈で、今にも肩が触れてしまいそうだ。変に意識しないようにしながら、俺はリニの手元を見る。真似をして葉を剥くと、中からプルンとした青い塊が出てくる。


 俺の左右に座ったリニもテルトナも、そのまま、葉でスライムゼリーを挟むようにして持つと、直接口をつけて食べ始める。


 俺も真似をして口へと運ぶ。唇に触れるプルプルとした感触。しかし見た目より歯ごたえがある。


「これは、なんというか──爽やかな味だな」


 俺の感想にテルトナが頷きながら同意してくる。


「すっきりするだろう、バクシーさん? 眠気覚ましにもいいんだ。徹夜で錬金術をしたあとでも、これを食べると頑張れる」

「テルトナは相変わらずなのですね」

「リニは、少し変わったな? 前はもっとテンションが高かった」

「ふふ。私もシスターになりましたので。いつまでも、昔のままという訳にもいきません」


 一瞬澄まし顔をするリニ。しかし、すぐにその澄まし顔も崩れて、笑顔で口一杯にスライムゼリーを突っ込むと、もきゅもきゅと音をたてる。


 俺からみると、リニは今でも十分にお茶目に思えるのが、前はもっとだったらしい。

 二人が話している間にスライムゼリーを食べすすめる。気がつけば二人とも完食していた。


 ──話しながら、いったいいつの間に……


 そうして話が途切れたところで俺はようやく本題をきくかと切り出した。


「それでえーと。シスター・リニでいいのかな。話ってのは何なんだ?」


 名残惜しそうにスライムゼリーを包んでいた葉っぱの匂いを嗅いでいたリニが、こちらを向く。


「バクシーさんには、ぜひ迷宮調査の護衛をお願いしたいと思っております」

「はいぃ?」


 俺は思わず変な声が出てしまった。

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