第13話 再び礼拝堂
ミリサリサの両手いっぱいに肉串しを託した俺は、礼拝堂へと戻ってきていた。
──あれだけあれば、少しはお腹いっぱいになるよな。切り詰め生活は、本当に辛いからな。絶えることのない空腹は、じりじりと精神を蝕んでいくし……たまには腹一杯になるまで食べてくれ、二人とも。
礼拝堂の中で祈りを捧げながら、ついつい思考がずれていく。俺はダメだダメだと自分に言い聞かせるとシストメア様への祈りを、真剣に捧げ始める。
──ステータスはどうかな……お祈りポイントは6のままか。ふむ。やはり一時間そこらじゃダメか。次はまた、一時間後に来るか。
そう考えながら礼拝堂を出たところで、声をかけられる。最近、こういうことがやけに多い。
「もし、そこの方」
「……俺、ですか?」
「朝もいらしていたとお見受けします。その信心深さを見込んで、お願いがございます」
そういって声をかけた来てきたのは、朝一に来たときにいた、お茶目なしぐさのシスターだった。
「いや、そんな信心深いって訳でも無くてですね……」
「加護を、お持ちですね?」
言葉を濁して誤魔化そうとしたところで、鋭く問いかけてくるシスター。
俺は、思わず黙りこんでしまう。足元のガルナタタンが俺の緊張を察して警戒体勢になったのが伝わってくる。
──ガルナタタン、大丈夫だから。
──ばぅ~
「よろしければ……」
「いや、なんのことかわかりません。では」
「あへぇ?」
俺は強引に話を切ると、すたすたとその場を立ち去ろうとする。
変な声をあげて、ぽかんと変顔をさらすシスター。整った目鼻立ちゆえ、いっそうインパクトがある。
しかし、すぐに気を取り直してしまい、シスターは俺に抱きつくようにして、去るのを阻止してくる。
「ちょ、ま、待ってくださいまし! ほんの少しだけっ。ちょっぴりでいいんですっ。あなたにも得になりますって」
「いや、不要です! というか、いいんですかこんな往来で、そんな振る舞いをされて。シスターなんですよね?」
「見習いみたいな者なので、大丈夫です!」
訳のわからないこと、胸を張って言い出すシスター。腰にしがみついた彼女を力ずくで引き剥がす訳にもいかず。俺がどうしようかと思い悩んだいると、そこに再び声がかかる。
「あれ、バクシーさんとリニじゃない? 二人は、知り合いだった……の?」
テルトナだ。
言葉をきったテルトナが、俺とリニと呼んだシスターの様子をまじまじと見る。
動きを止めて、改めて俺はいまの自分達の体勢を見返してみる。
うん、これは良くない。
「二人は、そういう関係?」
どこか覚めた目でそう問いかけてくるテルトナに、俺は必死に否定するのだった。
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