誰何Ⅳ
倉庫までの道程は距離にしておおよそ5kmほど。日に二度から三度往復するのが常だった。
二度目の
「
すっかり警護服を脱ぎ捨て、上は肌着に下はバギーパンツという恰好で現れた犬が、
「なんで
悪態をつきながらジーンズを引き上げると、よろめいた。それを天然の
「行くのか、行かないのか?」
肩を押されて、結局転倒した。情けない。
「
火のない煙草を
「
「俺は特に」
「何か土産買っていけよ。ホラ」
立ち止まり、少女が露店に並べる宝飾具のひとつを手にとると、犬は輪を広げて見せた。首飾りだった。
瞬間、妹の「お兄ちゃん、コレとって」という絵面が重なって見え、ああ、あれはあちら側での出来事だったな、と思う。断ったのは単にあやとりを知らなかっただけだった。
あやとりなんて誰から教わったのだろう。仲の良かった<
「あんまり感傷的になるな」
気づくと自分の
「あ、あの」と少女がおどおどした声音で言った。「首飾り」
「買うよな、雉。そのぐらいの稼ぎはあるだろ」
俺は黙ってポッケから紙幣を取り出すと、少女に差し出した。
「釣りはいらねーよ」と勝手に犬が言って、少女の顔が目に見えて明るくなったものだから、俺は仕方なしにうなずいた。
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