足りない人数


 案の定、ノゾコさんは資料館の真ん中で蹲っていた。どうやら、一人で探索をすると言っていた勇気は枯れ果てたようで、俺たちのことを見てすぐに涙のダムが決壊した。


 彼女は何やら叫びながら果林さんに抱き着いたが、到底人語とは思えなかった。

 あと姿を確認していないのは十市さんと柚葉さんの二人だ。魚澤さんは部屋から出てきていないから安心だろう。


「お前たち、ここにいたのか」


 扉が開いて、十市さんが入ってきただけなのに、反射的にノゾコさんが悲鳴をあげて、十市さんですら申し訳なさそうな顔をする。


「柚葉さんは見ましたか?」

「いや、見てねぇな……」


 彼の首を振る動作に俺は悪寒を感じた。


「俺は魚澤が外から逃げてないかどうか確認するために、一度外に出て、窓が開いていないかどうか確認してたから、三階には行ってない」

「い、一応、確認しようよ! 自分の部屋にいたなら大丈夫だと思うし!」


 果林さんがノゾコさんの手を引っ張りながら、資料館を飛び出し、俺たちはその後を駆けだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る