悲しい出来事
痛む膝を引きずりながら俺と源太さんはカサゴ館への道のりを歩いていた。
「二人ともすごいって! 謎解いて犬小屋だって分かったんでしょ?」
「俺たち、虱潰しに探してただけだからさ。見つけられるのは当然のことだって」
後ろから見る俺たちの背中はずいぶんと落ち込んで見えるのだろう。後ろから己龍と果林さんの励ます声が聞こえる。
あまりにも悲しい出来事があったため、俺と源太さんは犬小屋の奥の壁に貼られていたプラカードの内容すら二人に聞いていなかった。それどころか、果林さんが教えようとしたのを「あとで、聞きます……」と断ってしまった。
ビデオカメラで録画しているらしいので、落ち着いたら、確認させてもらおう。
それにしても、ずきずきと膝が痛むなと思って、自身の両膝を見下ろしたら、明るい色のジーンズが汚いダメージジーンズとなっていた。しかもどっちの膝小僧からも血が溢れている。
薬はあると言っていたが、治療用の道具もあるだろうか。なかったら困るなと思いながら、俺は痛む足を動かして、カサゴ館に向かった。
結局、わざわざ持ってきた懐中電灯の使い道もないまま、落ち込んだ状態でカサゴ館の玄関を開けた時、ホールの食堂側の扉を開けたノゾコさんが泥だらけな上に血を流している俺と源太さんを見て悲鳴をあげた。
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