フェリー乗り場


 己龍と再会したのはフェリー乗り場だった。


「本当に誤魔化せたのか?」

「ああ、誤魔化せた!」


 元気のいいことで何よりだ。俺の身長は大学生の頃と比べて、縮んでいたが。


 どんな風に誤魔化したのかは知らないが、それは俺には関係ない。己龍がロボットであることが人にばれてもそれは己龍と星乃里研究所の問題で、俺の問題ではない。


 俺と己龍はフェリーの前に立っているジャケットを着ている受付らしき人物に近づいて、封筒の中に入っていた謎解きゲームのチケットを見せた。


「ああ、謎解きゲームの人だね。この船であってるよ。運転は俺がするからよろしく」


 ブルーのアウトドア用のジャケットを着た男性が伸ばしかけの髭を触りながら、俺のチケットを受け取った。


「あの島でゲームねぇ……。今時の奴らは怖いことを平気でするもんだ」

「怖い? 都市伝説が語られているというのは小耳に挟みましたが……」


 俺の言葉に船頭の男が目を丸くする。


「お前、何も知らずにあの島に行くのか?」

「ええ、はい」

「あの島はやめといた方がいい。あそこに行った奴は、行方不明になる。なんだって、足を人魚に盗まれて、帰れなくなっちまうんだとよ」


 怖い怖いと肩を竦めると船頭は、己龍のチケットも受け取り、さっさとフェリーの中へと入ってしまった。


「あんたたちで最後だ。さっさと乗んな」

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