星乃里研究所
犯人は駆けつけた警察により連れて行かれ、俺と己龍の死体は、警察と共にやってきた黒いバンに乗ることになった。黒いバンの中には黒く長い髪を頭の後ろで一つにまとめている女性がいた。真っ白だったはずの白衣を炭のように真っ黒に染めた彼女の名前は、
「黒川さん、いつもお世話になってます」
「……また死んだのか、己龍」
『ごめんごめーん。いや、俺だって毎回死のうと思ってるわけじゃねぇのよ。琉斗の探偵としての雰囲気が死んでるから俺が探偵だと間違われるんだって。幽霊かっていうぐらい存在感がないこいつが悪いんだよ』
運転席と助手席以外の椅子が取り払われ、救急車のような構造となっている黒いバンの中に身体を貫通させてきた己龍が喚く。運転席に座っている黒川さんは道中で買ったらしい缶コーヒーに口をつけた。俺は助手席に座ると、シートベルトを装着した。
「アンタが自由奔放だから、探偵だと思われるんだろ。直すのも毎回面倒だ。大人しくしたらどうなんだ」
黒川さんの言葉に己龍は車内を飛び回るのをやめて、大人しく運転席と助手席の間に寝転がった。
『それで? 俺の本体の方は大丈夫なの?』
「いつも通り、大した変化はない。死にすぎて、死ぬことに慣れたのか、今では間違えて心臓が止まったりすることもない」
怖いことをさらっと言うのはやめてほしい。いくら普段の己龍が鬱陶しいからって、俺も鬼ではない。己龍に死んでほしいと心から願ったことなどない。
「琉斗。分かってるとは思うが、己龍のあの体は」
「分かってます。黒川さんの研究所で貸し出してくれているロボットだということは十分理解しています」
何度も説明されているのでもう聞きたくないというように、俺が黒川さんの言葉を遮ると彼女は「本当に分かっているのか疑わしいな」と缶コーヒーを置いて、ハンドルを握った。
「己龍は黒川さんたちの研究に付き合うという条件でロボットの体を貸してもらっている。ロボットがなんらかの不具合により停止すると電脳体となる、ですよね」
『あと、琉斗や黒川さんがつけている特殊な眼鏡とイヤホンがないと俺の姿は見えないし、俺の声は聞こえないってわけだ』
スパイ映画の特殊装備みたいだ、と己龍はけらけらと笑った。黒川さんは一度も俺たちの方を見ずに深いため息を吐いた。
「充分分かっているのなら、ロボットを毎回壊すようなことはしないと思うんだが?」
「……申し訳ないです」
『それはごめんって』
俺は別に黒川さんたちの研究に関わっているわけではないが、己龍と共にいて、毎回己龍が死んでいるのは、申し訳なく思う。一度、己龍自身に「琉斗の管理不足なんだから、俺を責めるなよ!」と言われた時はロボットだろうがなんだろうが、己龍の顔に右ストレートをぶちかましたことはあるが、あれはノーカンだ。
「それはそうと、今回も犯人を見つけたらしいな」
『俺が死んだから犯人が分かったんだぜ!』
「途中から目星はついてましたから、己龍が死ななくてもよかったです」
俺にだって探偵としてのプライドがある。己龍が死んだおかげで推理ができたとは思われたくない。俺は己龍と一緒に行動する前から探偵をやっていたのだ。
「それはおめでたいことだな」
黒川さんにとっては俺のプライドも事件解決もどうでもいいことらしい。俺も己龍も思わず口を閉ざし、黒川さんの勤めている
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