第2話 同級生

「あれ?お前うちの学校のヤツかよ」


少年は初めの一言こそ丁寧であったが、そこからは馴れ馴れしい言葉遣いであった。


「・・・・・」


少女は驚いた。何故私のことを知っているのか・・・・・当然であろう自宅に戻らずそのままココを訪れたのだ。服装を見れば誰もが容易に想像出来た。


「・・・・・わりかし学校のヤツのことは知ってるつもりだったけど、お前何年?」


少女は小さく指を2本立てる。


「同級生かよ、尚更俺が知らないヤツがいたなんて驚きだ・・・・・てか言葉でいえよ」


「・・・・・」


「無視かよ」


「!?」


違う!少女はそう言いたい。だが既にパニックに陥った少女は言葉が出なかった。


「・・・・・お前もこの本好きなのか?」


「!?」


少女は更に驚いた。明らかに読書とは無縁の少年が自分が読んだことの無い本をあたかも一度読んでいるかのような問をしてきたのだ。


「よ・・・・・」


ようやく出た一言。だが続かない。


「よ?」


「読んだことあるの?」


「わりーかよ」


大きく首を横に振る少女。


「私、その本初めて・・・・・」


「そっか、最近見つけたんだ」


「貴方も読書・・・・・好き?」


「どうだろ、ここは漫画の立ち読みでよく利用するけど、多分お前の想像する読書は興味無い」


少しばかり期待した自分が馬鹿だったと落ち込む少女。


「なんか不思議でさ、たまたま読んで気になってもう一回読んだら内容が増えてるんだよ」


「なにそれ?」


本は基本完成された物が町中に並ぶ。少年の言うことが少女は理解出来なかった。


「誰かが加筆したってこと?」


「さあ?でも読んでると文章の感じは変わらないから執筆したのは原作者だけじゃないのか?」


「・・・・・」


「でもいくら言っても誰も信じてくれないんだよな~。なあ・・・・えっと・・・・」


「本田美子(ほんだみこ)」


「本田ね、本田。今日はお前に譲ってやるから今日と明日読んで感想聞かせろ」


「えっ」


「じゃあな」


少年はそう言い残し足早に立ち去った。


ほぼ毎日通っているのに今まで気が付かなかった本に彼に言われなくても美子は自然と手を伸ばす。


内容は正直美子にとってつまらなかった。主人公が長年住んだ故郷から離れ世界を冒険する。ありがちな物語・・・・しかも内容は中途半端で少年が冒険を始めたところで終わっている。


辺りを見渡すも続編となりそうな本は無い。


(これで終わり?)


「おっお婆ちゃん!」


少女は震える声で店主であるお婆ちゃんに尋ねる。


「どうしたんだいお嬢さん?」


「この本続き無いの?」


「その本はそれしかないよ」


「こんな中途半端なのに?」


「これは完成された作品だよ」


「?これで」


「あの男の子が言ってたでしょ?明日もいらっしゃい。そうすればわかる」


「・・・・・わかった。お婆ちゃん。また明日」


「はい。また明日」


少女はモヤモヤを抱えながら家に帰った。




翌日。少女は学校が終わり一目散にココに来た。


「お婆ちゃん。こっこんにちは」


「こんにちは」


「あの・・・・昨日の本ありますか?」


「あるよ」


お婆ちゃんの視線の先、昨日と同じテーブルにポツンと置かれた本。


早速表紙を開く美子。すると彼女は本の世界に吸い込まれていた。

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