第47話
「速さというのは暴力だ、というのが俺の持論でな」
「ちょっと楽しくなってしまったから、一週間は懲罰房行きを覚悟してくれ」
無論それは部下が行くのではなく、ニギが行くのだが。意訳すれば、これからお前らを殺すつもりでやるからよろしく、である。昨今の
とはいえ、部下の方もまぁまぁニギの部下である。特に、リコリスは。彼女はにっこりと、とても可愛らしい笑みを浮かべながら拳銃型演算機の銃爪を引いた。
途端、ニギに向かって飛来する手術用小刀。微妙な時間差をつけて発射されたそれらは、着弾と同時に爆発するという殺意しかない凶器である。
しかし、それらはリコリスの意図せぬ形で暴発した。ニギが、素早く脱いだ外套を前方に投げ放ったのだ。耐衝撃、耐爆破など様々な耐性を付与されている外套が、小刀に貫かれるもその進撃を食い止める。
爆発、衝撃。うひぇ、と情けない悲鳴がリコリスの隣にいたトルネの口から漏れる。そんなトルネを突き飛ばしたのは蝙蝠の翼を背中から生やしたシュガリで、だから、ニギの標的はトルネからシュガリへと移った。
「輪廻士相手に演算士が組みつきとか頭がおかしいんじゃないですか!?」
「俺はルガルル相手に素手で挑んだ男だぞ」
ルガルルとは、多くの都市で悪名を轟かせている犯罪組織、
「咬むな!! 人咬傷は医療部隊からの説教が長い!!」
シュガリの長い牙が宙を咬む。ニギは瞬時に組みつきを解除して、普段からは想像もできない速さで後退した。だが、それはただの逃走ではない。ニギを追って翼を閃かせたシュガリに対する迎撃、
細長く薄っぺらい黒色の八角形が、ニギを囲うように八つ。それらはくるくると回転し、花吹雪のような刃を射出する。シュガリは大きく口を開け、空気を軋ませる高音を、
防御ではなく妨害としたのは、シュガリなりの判断が故に。防御では競り負ける、ならば少しでも発動自体を阻害する。その判断は常ならば正しく、ニギ相手には間違っていた。
シュガリが展開した風の渦を切り裂き、ニギの闇の刃が標的へと到達する。シュガリの首から噴き上がる鮮血、それを見たニギが、とても楽しそうに笑っていた。
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