第38話
有名所では、「美」のペルマナント、「演」のナインシアター。彼等は社員の憧憬、崇拝、畏敬の対象である。社員はそれ故に貴族に従い、彼等の手足として働くことを幸福だと信じている。
「……仕方ない、「舌禍」を出すか」
「え? いや、そこまでは……」
「完全に目をつけられてるぞあいつら、多分あの糞女からだな……だから嫌いなんだ、都市としての機能が即日崩壊すればいいのに」
「ただただ陰湿」
そんなペルマナント家の一員と思われる二人組と会話しているキルシュとケンを眺めていたニギは、己の手首をとんとんと叩く。瞬間、ニギを取り巻くように現れたのは、半透明の
「ラングヴァイレ、百と三十二番に接続。そう、そいつら。高確率で
数多の窓には大量の演算式。その内の一つがかちかちと明滅し、棘だらけの舌を模した紋章が表示される。それは、
『……「舌禍」から「唯一」へ。命令を受諾しました。手段は問いませんか?』
「あぁ、何なら適当に破壊活動もしていいぞ。それがお前の計画に影響しないなら」
『……回収した後はそちらへ返せばよいでしょうか?』
「あー……そうだな、どうする?」
「どうするってまぁ、帰ってきたならこちらで何らかはしますけど」
「じゃあこっちへ送ってくれ。あー……海にいる
『……では回収後は帰郷する弟妹に任せます』
「あぁ、急な話で悪かったな。頼りにしている、ありがとう」
『……いえ、それが「唯一」のためになるのなら』
ニギが再度手首を叩くと同時に、ぱらぱらと消えていく窓。
「相変わらず子どもたちには甘いんですねぇ」
「それはそうだろう」
「尻拭いをさせて申し訳ないです」
「いや、それは別に。この間の借りを早めに返しておきたくて」
「まぁそうですよね! 自主的にしてくれるのは珍しいなとは思ったんですよ!」
「俺がそういう人間だということは?」
「知ってますよ!」
きゅっと渋い顔を作ったヘレシィは、やはり作った呆れ顔で溜め息を漏らす。
ニギ自身は借りを返すためと宣っているが、前回の貸しに対しては過剰な返礼だ。今度ニギが倫理委員会の諮問にかけられることになったら手心を加えようと、心中で決めたヘレシィであった。
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