第37話
一方その頃、
「俺のが知らん間に幾つかなくなってて長官からの怒られが発生してたんだがその原因が解ってしまったな。言い訳なら十文字以内で聞かなくはないが」
「ありがとうございます」
「俺が自分の意思で渡した訳ではないから礼を言われても困るしというかまずいつ盗った? 時期によっちゃあの女を事故に遭わせなきゃいけなくなるんだが」
「え、そんなになんですか?」
「人間に処方できる限界値だな。でなきゃあんなにすぐ効く訳ないだろう常識的に考えろよ」
「あー、どのみち帰ってきたら、ね……それよりも、先輩の口から常識的に考えろとか言われると何かこう……こう……」
「お? 何だ今から喧嘩するか? 言いたいことがあるなら俺を傷つけない配慮を最大限にしてから言え」
「先輩は常人の範疇に囚われない自由な発想が持ち味ですよね」
「そうだろうそうだろう、もっと誉めてくれていいぞ」
「秒で自分の言ったこと忘れるんだからもう」
「あっ今のは傷ついた」
「あっちょっと黙っててください動きがありました」
「むぐぐ」
素直に黙り込んだニギも画面を注視すれば、ケンとキルシュが貴族の居住区に入場した所。青を基調とした、豪華絢爛な邸宅、そして庭園。そこは居住区とは名ばかりの観光名所であり、住人である貴族たちもまたそうと意識して動いている。
「あー……映像、もうちょっと鮮明に撮れたらいいんですけども」
「ふっざけんなよお前、
「先輩と先輩の娘さんたちのお陰ですね」
「愛息子たちもだよ」
「あっちょっと黙っててくださいあれはペルマナント?」
「ふぬぬ」
またしても黙らされたニギ。ヘレシィは画面に写し出されている美男美女二人組を拡大した。薄布を何層にも重ねることで美麗な色合いを魅せている衣装は、確かつい先日、
日傘もまた、着色硝子で作られた虹の如く。露先から滴るように垂れ下がる煌めきの正体は、細工を施された宝石の類いだろう。それを眺めていたニギは、おおよその値段を計算してすんとした真顔(ニギは概ね真顔だが)になっている。
並み居る貴族の中でも「美」に傾倒しているペルマナントの、かなり中枢に存在している人間であろう。顔形がもう少し明確になれば個人を特定できるのだが、流石に用事も何も言いつけられていない
「さっきから微妙に目をつけられてる気がしてるんですよね、引き際は弁えさせてるんですけど」
「引き際というならあの糞女に気圧された時点では?」
「あれで帰ってきたらラブカかユニコに下げ渡しますが」
「人としての心がない……」
「なくて当たり前では?」
ニギとヘレシィは、互いにきょとんとした顔をして、互いに異なる方へ首を傾げた。その動きは、どうにも人間離れしていて、もしここにウルがいたならば「お前らそれほんとに気持ち悪いから止めなぁ?」と言われてしまうものであり。
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