第35話
そもそも何故、
表面上は友好的都市であり、観光客の行き来や貿易などもしているが、過去記録に残されているだけでも三回の大戦があった。
だがしかし、表面上は友好的都市である。それに、この二大都市が争えばその隙を突いた他都市からの侵攻が免れない。故に、笑顔の下で互いの脛を蹴り合っている現状があり、その一つが諜報部隊による潜入工作だった。
ケンとキルシュの任務は、
そうして、偽の経歴と理由を以て
とはいえ、これはまだ彼女が彼女をここに送り込んだ「化物」ヘレシィの本当の恐ろしさを理解していないからだがーーそんな彼女の相棒であり恋人役のケンは、僅かばかり青褪めた彼女の手を取り、予定よりもやや早いが宿へ向かうことにした。
「おや、そちらの方は御気分がよろしくない?」
「あ~……人間がいっぱいいて、人酔い? しちゃったみたいで~……宿で少し休もうと思ってて~……」
「それはそれは、お大事になさってください。宿まで乗機でお送りしましょうか?」
「や~……大丈夫~……」
あんまりしつこいなら喉笛食い千切ってもいいかな~……などとケンが思っていたことなど知る由もなく、二人に話しかけてきた
ケンは口内で舌打ちを押し殺し、キルシュを支えながら宿へと進む。進む道すがら、感じる視線、視線、視線。
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