第34話
わっ、と天高く響き渡る歓声。青空が写し出されたような、青と白銀の光が広がる。ケンとキルシュがそちらに目を向ければ、壮麗華麗な山車の上に、銀髪碧眼の少女が一人。
煌めく波飛沫を模した装飾の中、海原の青を織り出したような衣装。無邪気に無垢に、心の底から幸せそうな笑顔を振り撒く彼女こそが、
『みんな~! 毎日幸福~?』
歌唱機によって増幅された呼び掛けに応じ、青と白銀の光が揺れる。細棒灯は、
『うんうん! 毎日最高に幸福ね! それってとってもいいことだわ! ねぇそうでしょう?』
正しく波の如く、寄せては返す光の群れ。アイドルは両手を掲げ、高らかに歌った。
『御客様へ最高の幸福を! それこそが我々、
アイドルと同じ歌唱士であるキルシュは、それらが超絶的な技巧によるものだと察して息を呑んだ。水属性と光属性にはそれなりに親和性があるものの、こと微細な調整が難しい歌唱魔術において、混合属性を過不足なく扱える人間は少ない。
『さぁ、楽しみましょう、幸せに過ごしましょう! 我々、
魔術の効果範囲が広い代わりに、微調整が利かない拡声器型歌唱機であれだけのことができるなんて。キルシュは、言葉にこそ出さなかったが、この時点で心が折れかけてしまっていた。
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