第33話
幸福ではないならば。
都市民たちは幼少時から貴族が運営する学舎に通い、その適性によって様々な役職に振り分けられる。裏方を支える
それこそが、幸福なのだ。貴族は都市民の幸福のために存在している。都市民は何も考えず与えられる幸福を享受していれば良い。それこそが、
「いや奴隷制度~……」
「こらっ、外交問題になるでしょ止めなさいっ」
ぼそりと落とされた呟きに返されたのは鳩尾への拳一発。
周囲に満ちているのは楽しそうな笑い声、話し声。ここには
取り敢えず、
「いやだってさぁ~……」
「私たちは?」
「初めて
「よろしい」
そう、幸福でなければならないのだ。幸福でないならば、すぐに
「ようこそ海乙女の都、
「ありがとう、大丈夫、幸福です!」
「それは良かった! 最高に幸福な一日をお過ごしくださいねぇ!」
まだ年若くぎこちない部分のある
キルシュは、また一つ溜め息を吐く。それは、先刻のような安堵のものではなく、幸福でなければ人権さえ失われる幸福至上都市の都市民を憂いてのものであった。
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