第24話
その名前は、
最初に動いたのは三十三番。
「
ばらりと宙に広がった
それは、通常の歌唱士相手ならば有効打と成り得ただろう。実際、
「何だぁ? うっせぇなぁ……うっせェっつってんだろォがっ!!」
わんわんと空間を満たすウルの歌唱魔術は、ウルに憑いている
続いて、近くにいた
「お? 歌唱士かぁ? でェ、これからどォすんの? 何してくれんのォ?」
そんなフィニスに、ウルは興味を抱いたらしい。にまにまと楽しそうに笑って、フィニスの次を促す。この油断を利用できれば、と思った、その瞬間だった。
「……犯罪者は、死ねぇっ!!」
「あ?」
フィニスではなく、彼女が動いた。拳銃型演算機から放たれたのは、
「あーあ、興醒めェ……もー、じゃれるんなら餓鬼相手にでもしてろっての」
が、しかし、
「で、お前は……」
フィニスは、隠し持っていた振鈴型歌唱機を取り出そうとした。せめて一矢報いなければ、こんなの、理不尽で、理解不能で、正しくない。そう、これは正しくない。「狼男」も、彼一人に蹂躙された彼等も、誰一人として正しくはない。そう、思い詰めたフィニスが、す、と息を吸った刹那。
「お、丁度良かった、現行犯ってやつだな。リッター、平らげろ」
「マスターの命令を受諾……鏖殺します」
ウルが、何かに吹き飛ばされた。最高速の乗機に轢かれた人間(記録によれば、違法改造された乗機は時速三百粁を出したそうだ)のように。それでも咄嗟に防御したらしく、岩壁に半ばめり込み小さな傷を無数に負ってはいるものの、二足で数歩、歩き、立つ。そうしてウルとフィニスは、突然の乱入者へと目を向けた。
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