第22話
「三層以降は
再びの曲がり角、きぃんと響く音。手慣れた様子で語り歩く三十三番に従い歩くフィニスたち。
「本当はねぇ、修学旅行で四層に行くのはおすすめしてないんですよぉ。本当に何も考えてない学生さん相手だったら旅程変更をお願いしてるんですけどぉ、君らはちゃぁんと考えてたから特別ですよぉ?」
その途中、不意に三十三番が足を止める。人差し指を立てて唇へ、フィニスたちに向き直り、その場で止まるように片手で指示を飛ばした。
無論、逆らう理由もなく。フィニスたちがその場で立ち止まったことを確認した三十三番は、腰に提げていた拳銃型演算機で壁を二度撃った。
「あぁ? 確かにここを通るっつったろ?」
「既に通過したとは考えにくいので、まだこの辺りにいるはずですが」
「はずじゃ困るんだよねぇ~」
男が二人、女が一人。
「ちっ、仕方ねぇ、ここで待つぞ」
「おかしいですね、計算外だ」
「え~、待ち伏せ~?」
足音、そして消える気配。どうやらどこかの物陰に隠れたようだが、視覚で確認することができないため現状は曖昧だ。犯罪者だろうか、犯罪者だろう。
岩壁の中、小さく点る明かり。点火器で起こされたそれに照らされる、四人の顔。三十三番は、点火器を持っている方とは逆の手で、何かが書き付けられた帳面を掲げた。
『観光客狙いの強盗類
→土竜本社へ通報済
このまま応援が来るまで待機
必ずこちらの指示に従うこと』
フィニスたちに文字列を示した後、僅かに首を傾げて見せてくる。フィニスはそれに対して僅かに頷いた。三十三番は同じように首を傾げて残り二人に同意を促す。彼はすぐに頷いたが、彼女はそうではない。
だから、彼女と共に
しかして、彼女も負けてはいなかった。頑なに首を横に振り、犯罪者には立ち向かうべきだと視線だけで主張する。彼はフィニスと彼女の間でおろおろするばかりだ。
と、そこで三十三番が動いた。正しくは、その顔を覆っていた帯が。しゅるりと微かな衣擦れの音を立てた
『緊急事態における行動抑制』
ぱらり、と示された帳面の文字は契約時にも説明されたもの。犯罪者が蔓延る
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