第20話
「安心安全な
ぱっ、と両腕を開いてにっこりと笑った、自称三十三番、ジェニアトの男(ジェニアトは人種の特徴として小柄、童顔が多い。この男も見た目はバリアルタの幼子のように見えるが、とうの昔に成人していた)の顔には、片目を覆うように
「あの、修学旅行で……旅程はそこに書いているように、進められればと……」
「はいはぁい、ちょっと読ませてくださいねぇ……うん、うん。特に無理な行程もないしぃ、これなら大丈夫! 三日間、安心安全な旅をお約束しまぁす!」
ぱらぱらとそれを流し読みした三十三番は、にこにこと笑ったまま帳面を返す。フィニスも、フィニスの後ろにいた学生たちも、ほっとしたような表情になる。彼等は高等学校の修学旅行(
多くの学生は観光目的で
フィニスの右斜め後ろにいる男子は高等学校卒業後に演算機工房に就職することが決まっているため、他都市の工房を見学させてもらうために。左後ろにいる女子は
そしてフィニス自身は、
生来真面目なフィニスであるため、旅程の計画は綿密に。犯罪組織の拠点がある五層より下には絶対に入らないように配慮していた。幾ら授業で魔術を習っているとはいえ、それは自衛のためのものであり、積極的に攻撃するためのものではないからだ。
それにそもそも、法律は理由なき加害、許可のない戦闘行為を許していない。とはいえ、彼女はそちらを望んでいたようだけれど、とフィニスは内心で呟いた。
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