第19話
「別にね、敢えて犯罪者を起用している訳じゃないんだよ」
「だって、考えてもご覧よ。捕まって無理矢理働かされている人間より、自主的に幸福のために働いている人間の方がありとあらゆる面で効率的だろう?」
だから、とカノトは少しだけ笑った。傍目からは唇の端が僅かばかり痙攣したとしか見えずとも、それはカノトなりの笑顔だった。カノトは法律の遵守による幸福を謳う
「そして、最終的な結論を言うならば、僕が出るのが一番効率がいい」
そう言って、カノトは携えていた大旗の、石突きで地面を突いた。瞬間、世界の空気が変わる。
「
通常ならば、一対三百など正気の沙汰ではない。しかもその一は組織の長、都市の長。軽率な死が許される人間ではない。しかして、カノトは自ら戦場に立ち、旗を振る。
それは、彼の言葉通り、それが一番効率がいいから。特に一対多の局面において、彼以上に効率よくーー人間を焼き殺せる者など、そうはいないから。
「
本来ならば人間を一人焼く程度の出力が、
そうして、三百の命を一瞬にして焼き尽くしたカノトは、僅かばかり目を細めた。傍目には、目の端が痙攣したようにしか見えなかったが、それもまた。
「
一陣の風が、人間だったものを吹き飛ばしていく。それらは、黒く細かな砂塵となって、
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