第15話
さて、「化猫」ミネット=シェノンとは何者なのかと問われれば、問われた者によって答えが異なる。曰く、
「副隊長! ご報告が……」
「あぁ?」
ある日の強襲部隊待機室、ミネットしかいないと思い話し出した三等補助官は、外れを引いたと直感した。常の柔らかな雰囲気は欠片もなく、器用に片目のみを歪めて舌打ちするミネットを、知る人は「黒猫」と呼んでいる。
「すみません、急ぎで伝えなければならなくて……」
「なら早く言えよ、オレらは暇じゃねぇんだから」
傲慢さが溢れる、顎での指示。三等補助官は吃りつつも報告を上げた。巡回に出ていた三等戦闘官たちから救援要請があったのだ。恐らくは
「ふぅん……」
「それで、今出れる分隊を出そうと……」
「何で?」
ぽんと、ミネットの口から飛び出した疑問。三等補助官は、説明が解りにくかったのかと青褪める。が、ミネットの何では根本的な問いであった。
「交戦状態になったって、あっちから仕掛けてきた訳じゃねぇだろ?」
「は……いえ、でも」
「
「それは……」
三等補助官が口ごもる。ほぼミネットの言う通りの状況だ。
「それならウチから出せる分隊はねぇな。きっちり殺されて反省しろ。あぁ、罷り間違ってウチの情報を流したらこっちでも殺すからな」
とん、と机を指先で叩くミネット。隊長格にのみ使用を許されている、通信用の
「とはいえ……アイツはウチの情報を流しそうだな。仕方ない、近くには……あぁ、フィーロ、聞こえるか?」
『はいはい、何だい? 副隊長殿が仕事中のワタシに直接話しかけるなんて珍しいね?』
立ち竦んだままだった三等補助官が身震いする。フィーロ、と呼ばれた通信先の女はーー悪い意味で、とても有名だ。
「南部低層、第三区。詳しい場所は
『それはワタシのやり方で片付けていいってことかい?』
「そうじゃなきゃ頼んで……待て、免状は?」
『大丈夫! まだ残ってるよ! 後二分遅かったらわからなかったけどね!』
「ならいい、帰ったら認識票を出しておいてくれ、再申請はこっちでやっとく。清掃部隊にはこちらから連絡しておくから」
『わかったよ! うふふ、嬉しいなぁ、楽しいなぁ、どんな風にしようかなぁ……』
楽しそうな声が途切れ、待機室に満ちる沈黙。ヴィクスン=フィーロ、強襲部隊の二等戦闘官で、強襲部隊員としての異名は「糸鋸」。
「フィーロ分隊を派遣した、これでいいな?」
「あ、はい……」
三等補助官は、心の中で交戦中の三等官たちに詫びた。自分の話運びがもう少し巧かったならば、味方に八つ裂きにされることはなかっただろう。
「ってフィーロ!! 二分遅かったらって何だ!? 何しようとしてた!?」
次の瞬間、顔色を変えたミネットが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます