Epsode3 安易な脱出

爺さんは接吻を終えると、満足そうに舌なめずりした。


俺のファーストキスがこの爺さんかと思うと、とてつもない殺意が沸いてきた。


「・・・この老いぼれめ!」


俺は立ち上がって、爺さんに向かって行った。

スライムが手首を固く絞めてきたが、ものともせず、俺は両手で爺さんを殴った。

「ガンッ!」

爺さんは前へ、ツンのめって倒れた。


「はぁ・・・はぁ・・・俺の尊厳を返せ!!」

城の中で反響して、俺の声が響く———————

すると、辺りから歓声が沸いた。円陣を囲んでいた爺さん達が嬉しそうに隣同士肩を組み合ったり、拍手をしたりしている。

「こいつら・・・イかれてんのか?」

倒れた爺さんが立ち上がった。俺は警戒して、後ろずさりした。

が、敵意はなさそうに見えた。少し痛そうに、打たれた腰をさすっていた。

しかも、なんだか嬉しそうで、、、

「なんなんだ?」

爺さんは右手を出してきた。


「???」

手を縛っていたスライムが解かれ、爺さんは手を出せと言わんばかりに右手を揺らす。

「騙すつもりだな・・・、そうはいくか!」

俺は猛ダッシュした。

城の入り口に向かって一直線に。


あいつらのスライムが飛んでくる前にこの城から出なければ。


爺さん達が指をパチンと鳴らし始めた。


ゴポポポポッ。

スライムの渦巻く音がする。

振り返るな。振り返ったら捕まる。


入り口まで辿り着き、俺は重いその扉を開けた。


ヒュンヒュンヒュン!

物凄い大量のスライムが飛んできた。


閉めろ、閉めろ、閉めろ!


俺は力の限り押して、扉を閉めた。

スライムの打撃が扉に当たる音がする。

開けられないように扉を抑える。


くそ・・・これが開いたら、捕まる・・・。


ダダダ、ダダ、ダダダダ。

スライム弾が威力を増してきた。扉が押され始める。

そうだよな、警備も厳重そうだし、やっぱり無理か・・・。

また地下牢行きか? それともあの小屋行きか?

妖怪だらけの地下牢と、精気のない人間が頭を駆け巡る。


嫌だ、どっちも嫌だーーーーー!

どうにかして逃げる方法を探さないと!


扉前で踏ん張っていると、ゴソゴソと草むらから何か生き物が動く気配がする。


なんだ! なんだ! 新手か! もうお終いか!


ぴょこんと、その生き物は姿を現した。

可愛らしい尻尾とチャーミングな耳、そして、、、アホそうな面。

地下牢の狸だった。先程の人間の姿ではなく、動物の姿をしていた。

狸は化け狸だった。



「お前を助けてやるよ」



狸は、俺に話しかけて来た。

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