Episode1 異世界へ


ゴトン。という音と共に、光が店内に射し込んで来た。


あれから、どれくらい経ったのだろう?


店は正常に戻った。


あの妖精は、夢か幻かに違いない! きっとそうだ! 



入口扉の隙間から美味しそうな匂いが入り込んできた。

クッキーを焼いている時の匂いみたいな。


「グゥゥ・・・」

お腹が急に鳴る。


何か食べに行こう。今日はラーメンがいいか・・・。


コンコン…。


「!!!!」


ちっこいおっさん? いや、お爺さん達が、窓に張り付いてこちらの様子を伺っていた。


怖っ!えぇ・・・怖っ!  何か、俺の事、じっと見てる。


お爺さん達は、店の扉を開け、中に入って来た。


「m(tceTt,ahwj m("tcegme#jGA」

「'gemajm("m(tcegme#」


話しかけて来たが、言葉がわからない。目、髪、髭の色は銀色。耳や鼻の先は少しトンがっていて、キラキラ輝く服を纏っている。


嫌な予感がする・・・。


俺は恐る恐る、表を見た。


「!!!!」


獣人、妖精、小鬼、ガーゴイルの馬車。空飛ぶ女の子。氷男。スライム人間など初めて見る生き物や、風景が広がっていた。


あ…、あ…。

腰を抜かしてしまって、尻餅を付いた。

混乱しすぎて頭が痛ぇ。

まだ夢でも見ているのか。


小さいお爺さんが俺の服の裾を引っ張る。


「m(tceTt,ahwj m("tcegme#jGA」



相変わらず、何を言っているのか全く皆無。

「全然何言ってるか、わかんねーよ!」

お爺さんに向かって怒鳴った。


お爺さんは、人差し指をピンと立てて、

パチンと鳴らした。


すると、俺の身体が宙に浮いた。

「はっ!? え、えっ! 何!?」

もう1人のお爺さんも指をパチンと鳴らすと、指からスライム状の液体が出て来て、俺の身体を包み込んだ。

「わっ! 何だよこれ、ネバネバで気持ち悪…」


俺はジタバタと抵抗したが、全く降りられない。しかも、ネバネバは身体にまとわりついていて、手で剥ごうとしても一体化してくっついてしまう。


「え!? え!? ふざけんな! 何なんだよ! 俺が何したんだよ!」

大声で叫ぶと、お爺さん達は、目を細め嫌そうな顔をした。

「離せ! 離せ! 離せ!」

更に嫌そうな顔。

いいぞ! このまま言い続ければ離してくれるかもしれない。

「あー! あー! あー!」

俺は大声を出し続けた。


お爺さん達はお互い顔を見合って、今度は左手をパチンと鳴らした。


「(あー!) (あー!) (あー!)」

あれ、声が出ない。

後、なんだか身体が…。

手足がガクッとなり、身体に力が入らなくなった。

全く動かせない・・・。


やべぇ! やべぇ! やべぇ! 俺まじピンチじゃん!

そして、俺の意識はだんだんと遠ざかっていった…。


俺、どうなっちゃうの…。

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