第28話 らいかんさんとブロッコリー教授。

アナリーさんさんの一言で剣を引く兵士たち。

まだ、信じられないという顔でこちらを見ています。


「らいかんさん。ごめんなさいね。」

「いえいえ。お気になさらずに。それよりも早く。」


人の命がかかってますものね。

いろいろと言いたいこともありますが、まずはそれが第一優先です。


 ◇


大理石の石畳をコツコツと歩き、王級内神殿の聖堂から静養所に向かいます。


アナリーさんは、無言で目に涙を貯めながらも、急がずゆっくりと進んでいきます。

この通路の奥に「静養所」の部屋札が見えてきました。


そこに着く手前でアナリーさんが足を止めます。

そして、通路の左の部屋のドアノブに手をかけ、それを開けます。


 ※


「先生!アナリー只今戻りました。」


「おお!戻ったか!それで、リファイン草はどうだった?あの薬草の魔術師は協力してくれたか!」


奥から、白髪アフロのおじさんが顔を出します。

あら?この方は確か。


「ええ。ええ。もちろんです。ご紹介しますね。こちらが…。」


「おおおお!らいかんさん!ここまで来てくれたのか!」

「お久しぶりですね。ブロッコリー教授。」

「え?」


「え?ってお前。魔術師とは知り合いだと言っただろう?何度も王都直行依頼を出しているし。だから、手紙を書いて渡しただろ。」

「え?」


「はて?教授、わたしお手紙なんて頂いていませんよ?」

「あ…!」


「え?アナリー私の書いた手紙はどうした?」

「今気が付きました…。薬草採取のプロの「人」に渡すものだと思い込んでいまして…薬草の魔術師の「らいかんさん」には渡していません…。ですので、まだここに…。」


アナリーさんは、鞄から一通の手紙を取り出します。


・・・うん。


わたしと教授は、残念そうな目で彼女を見ます。



「まぁ…この残念なのは…いやいや。そんなことより、リファイン草は?」

「ここにありますよ。はいどうぞ。」


「おお!確かに。らいかんさん危険なお願いを聞いてくれてありがとう。」

「いえ。実はいろいろありまして、エルフの村で狂った村長から貰ったのですよ。」


かくかくしかじか…。

わたしは、ブロッコリー教授に道中のことを話します。


教授が中指と人差し指をクロスさせています。

そして、臭そうな顔をしてアナリーさんの足元を見ていますね。

わたし知ってますよ。ばーりあって奴ですよね。


やーい。えんがちょ!


 ◇


リファイン草は、前にも言いましたが、茎に毒がある草です。

ある意味、強い毒草なので、そのまま服用すると死にます。

良薬は口に苦しの酷い版、薬と毒は隣り合わせ。そんなところです。


わたしもお薬にすることが出来ますが、ここは教授にお任せします。

この方の技術は、恐らく世界一です。


教授は、リファイン草を丁寧に切り、擦り、魔法で乾燥させます。

そこからは、緻密な分量でその他のお薬と混ぜ調合していきます。


あっという間に調合は終わりお薬が完成しました。


そして、教授がアナリーさんの方を見て、真剣な顔で言います。


「これをお前に飲ませても、お前の病気は治らない。だが、あいつには効くはずだ!だから、早くあいつにこれを飲ませてやれ!」


え?アナリーさんって、ご病気だったのですか?

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