第36話 まあるい虹と龍神(4)

眠ってしまった仁と天を颯さんが空中に浮かべ、起こさないようにそっと見守りつつ、奏白様とまた話をする事となった。


「奏白は、この地の守護をしつつも私達に力を貸すと云う事か?!」

「吾は此処から離れる事は無いが、いつも見守っておるし呼んでくれればいつでも参る。」


「恩義を感じての事であれば無用だぞ。」

「吾は其方を良き友と思っておる。明日香も子供らも気に入った。だからじゃ。」


「・・・。明日香だけなら守る自信はあるが、子供がいればどうしても隙が生まれてしまうからな。申し出は有り難く受け入れさせてもらう。」


颯さんはそう言って柔らかく笑った。


「眷属神に其方を嫌悪する者がおるのは仕方ない。手を出さなければ良いと思うてたが、手を出してきても其方は躱せると思うておった。じゃが、奥方や子まで排除しようとする動きが活発化して、

吾の耳に入ってきた。それで大日様に連絡したのじゃよ。 ”吾を守護に付けさせよ” とな。」 

奏白様は淡々と語った。


「奏白がついてくれれば私は何の心配もない。これから宜しく頼む。」

「よいよい。では、いつでも吾が気付くようにしないとな。先ほど笛と言うておったな。」


「明日香は笛の名手でな。精霊が力を貸す笛を授かってる。明日香、笛を見せてくれるか?」


「はい。これです。」私は静かにフルートを取り出し、捧げ持った。するとフルートはふわっと持ち上がり、奏白様の元へとゆっくり移動した。


空中に浮かんでいるフルートをじっと見て、

「む。確かに二つの笛がある。」

「はい。元のフルートに重ねて、横笛を授けられました。」


「ほぉ。それは良い。では更に重ねるとしよう。」

奏白様が呟き、フルートを空中へ浮かせたまま呪文を唱え始めた。


”ヒフミヨイ マワリテ メクル ムナヤコト アウノスヘシレ カタチサキ マカタマノ アマノミナカヌシ タカミムスヒ カムミムスヒ ミスマルノタマ”


蒼白様が呪文を唱えると、まばゆい光の輪が出現し、フルートはキラキラ輝きその光の輪に吸い込まれた。瞬間パァッとまぶしい光を発し、光が落ち着くと光の輪の中にフルートと横笛、新たに竜笛が出現した。


そして三本の笛は、光の輪の中で共鳴し、混ざり合うようにゆっくりと一つになっていった。

その後何事も無かったかのようにフルートは私の手の中に戻ってきたのだった。


「これで何処に居ようと吾と繋がっている。明日香、”龍神”という曲は知っておるか?!」

「はい。一度聞いたことが有ります。」

たしか、非常に神秘的な曲だがテンポが速い曲だったと記憶している。家に帰ったらお母さんに聞いてみよう。


「その曲を吹けば、いつでも駆け付ける。」

「!。ありがとうございます!」


「颯、今日は会えて嬉しかったぞ。」

「奏白。私も嬉しかった。又会おう。」


颯さんがそう答えると、奏白様は気品に満ちた笑顔を浮かべ、水面に消えていった。


**


夕方自宅に帰り、眠っている仁と天を布団に寝かせてから、颯さんに話しを聞いてみた。


「颯さん。今日はすごく吃驚しました。奏白様と不動明王様に出会ってお話をさせて頂いた上、

奏白様は私達の守護を不動明王様に願い出ていたなんて、本当に良いのでしょうか?」


「私の役に立とうと、かねてから決めていたかも知れないな。」

「颯さんに恩義を感じている事ってどんな事なんですか?」


「大した事では無いと思うが、聞きたいか?!」

「是非。」


私の返事を聞いた颯さんは「そうか。」と言って200年前に起きた事を話してくれたのだった。


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いつもありがとうございます。仕事と家庭の都合上、不定期投稿になっていますが

これからもよろしくお願いします。

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