第35話 まあるい虹と龍神(3)

「明日香。神が名を名乗ると云う事は、名乗った相手に支配されると云う事なんだ。」

と、徐に颯さんが爆弾発言をした。


「はぁぁ?!ど、ど、ど、どういうこっちゃ??」

颯さんの言ったことが理解できず、私は変な言葉使いになった。。


「そのままの意味だ。明日香は白龍を動かすことが出来るようになった。」

私は青ざめて、

「嘘でしょう?!そんな恐れ多い事出来ません。名前は聞かなかったことにします。」

と、言った。


「ほっほっほ!吾の名を呼び、吾も明日香の名を呼んだ時点で其方はもう吾と関係は切れぬ。

諦めるが良いぞ。」と、愉快そうに笑った。


私はあまりの事に眩暈がして腰が抜けそうだった。そんな私を見た颯さんは

「難しく考えなくても大丈夫だよ。明日香は笛で精霊の力を借りる事が出来るよね。それと一緒だと思えばいい。」


「いや、でも・・・。」そう言い淀んでいると、

「ほほ。そのことは後じゃ。今度は子供らの事よ。」奏白様は一旦話を切った。


はっ!そうだった! あまりの事に私は大事な子供達を忘れてた。


奏白様の言葉で正気に戻った私は子供たちに目を向けて、

「仁、天、ごめんね。母様びっくりし過ぎて、貴方たちを一瞬忘れてた!」

ちょっとだけお道化てそう言ったら、思わぬ答えが返ってきた。



「久しぶりだな、颯。そして明日香よ、こうして直接話すのは初めてだな。」と、神のオーラを放ちながら話しかける仁に、私はきょとんとして、「え・・・?」と言っただけで言葉が出てこなかった。


すると今度は天が仁の後に威厳たっぷりに話す。

「颯、明日香。良く働いてくれているようだの。礼を申す。」


仁とそらは神の依り代の役目がある。憑依されている状況には慣れていたつもりだったが、3歳児の

わが子に威厳たっぷりで呼び捨てされる親ってどうよ・・・。普通の感覚なら違和感しかない。

もう、開いた口が塞がらなかった。


颯さんは神が誰か理解したらしく、恭しく頭を垂れながら

「やはり不動様でしたか。ご無沙汰しております。」と言った。


私はびっくり仰天して、「不動明王様ですか?!」と、思わずひれ伏しそうになった。


「正確には大日様だな。不動明王は化身した姿じゃ。天照様とも呼ばれておる。」と、奏白様が教えてくださった。


そんなに高貴な神が降りてきてくださるとは思ってもみなかった。


「身に余る言葉、畏れ多い事でございます。」私は平身低頭、わが子に憑依している神に頭を垂れた。


仁と天は、この後交互に神の言葉を紡いだ。


「良い。此度、奏白に繋ぎをとらせたのには理由があった。」

「理由ですか?」と颯さんは不思議そうな顔をした。


「颯。其方はあやかしという今の立場に不満はあるか?」


「ありません。本来なら永久に幽世かくりよにいるはずだったこの身を、私の願いに耳を傾け不動様の名代として現世うつしよに戻してくださった。その事に何の憂いもありません。しかも明日香と夫婦になり、子供まで授けてくださった。感謝すれども、何の不満がありましょう。」 颯さんは迷いなく答えた。


「明日香よ。其方はどうじゃ?」


「私は颯さんと夫婦になれて、子供も授かり心から幸せです。この幸せは何物にも代えられません。」

私も淀みなく答えた。


「この先何があっても耐えられるか?」


「全て受け止めます。」

「颯さんとわが子の為ならば、厭う事も憂う事もありません。」  私達は思いの丈を口にした。


「何処までいっても颯はあやかしのままで、明日香は人間のままだ。それでも良いのか?」


「「はい。」」


この後も神は、禅問答のように 延々と私達に嫌という程質問してきた。。


そして、大日様はふっと笑った。


「其方らは良き関係を築けたな。吾の目に間違いは無かったようだ。」と、仰った。


「二人の覚悟は見て取れた。奏白に任せる。」


「ほっほっほ。承知。」


「颯、明日香、この先奏白が手助けする。吾も助言をする。それから、眷属の其方らに対する認識を改めるように吾が指導する。安心するが良い。」


そう言って神は子供達から離れていった。


「「ありがとうございます・・。」」 仁と天は疲れたらしく、すぐ眠ってしまった。


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雨の日は空を見上げて、龍神様が飛んでいないか探してます(笑)。

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