雪の降らない街

「寒いね」


話したい大切な言葉を抱えて、君と歩く帰り道。


雪が降りそうな寒さの中で、雪の降らない街を歩く。


悴む手は行き場もなく、ポケットの中で縮こまる。



「バイバイ」


いつかこの街で雪が降ったら、言おうと思っていたこと。


聞かないままで君は、雪の降らない街を出ていく。


言えない言葉は行き場もなく、心の中で蹲る。




『好きだよ』


君と出会ったあの日から、ずっと思っていたこと。


雪の降らない街の中で、頬に一粒雨が降る。


積もった想いは行き場もなく、僕の中でただ溶けていく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る