第22話追放ざまあは難しい

雨野月子

「おまえのような無能はこのパーティーから追放よ!!」


びしっと指をたてて、言われました。パーティー組んだ覚えはないですが。

これはいまやひとつのジャンルとしてなりつつある追放ざまあの冒頭ですね。

一見すると無駄なスキルしか持っていない主人公が冷酷な勇者から追放をいいわたされるのです。ですが、実はそのパーティーを支えていたの主人公のスキルでした。

主人公を追放したパーティーは没落の一途をたどっていく。

ひるがえって追放された主人公は一人だちし、その才能にみあった対価を手に入れて成り上がっていくのです。


追放ざまあはぱっと見ると誰でも書けそうな気がしますが、案外難しいです。

まず主人公のスキルが地味で役にたちそうに思えないものにしないといけません。

これが普通に役に立ちそうだと追放される意味がなくなります。しかし本当に役に立たないスキルではいけません。

地味だけど使いようによってはものすごく強くなるものでないといけません。


雨野月子

「火炎魔法のスキルを持っているのに追放されちゃった」


魔法が使えるのなら別のパーティーでもやっていけるのでは。このように一見して役に立つスキルだと意味がありません。

なのでポーション作成や動物使いなんかのスキルになりやすいのでしょう。


また追放した側のパーティーは主人公を追放したばかりにひどい目にあわないといけません。そのあと平和に暮らしましたではいけないのです。

その追放した側のパーティーがひどい目にあわないとカタルシスは得られません。

だが主人公の能力を見抜けなかった勇者が勇者たりえるのかという問題もあります。

そこそこ有能でないといけないのです。

たんなる間抜けではいけません。


雨野月子

「追放ざまあ人気だけど難しいわよね」


簡単そうに見えて人気のある追放ざまあをはじめとしたWeb小説はけっこう考えられているのです。文章が簡単なものが多いからたいしたアイデアを使っていないということではありません。人気のあるWeb小説はそう難しいわけではない文章と単語でわかりやくして、しかも読者を楽しませようとストーリーがねられています。

でも世の中にはこねくりまくった文学的なもののほうが高尚だと言う人もいます。


雨野月子

「それはひとの好みの問題よ」


純文学が悪いわけではけっしてありません。エンタメ小説もWeb小説もそう簡単にはいかないのです。

ランキングに乗るのも至難の技です。

個人的な経験ですが、やっと載ったと思うとまわりは星★1000や2000がついている化け物のような人や書籍化もされたことのある人などが見えてきます。

そんな作家さんたちがプロアマの垣根を越えてしのぎをけずっているのです。

けっして手を抜いているわけはありません。


雨野月子

「これだからWeb小説はなんて批判する時間があったら作品をひとつでも書くほうが有意義よ」


ネットの発達によって誰もがやりたい表現をできるようになったのはいい時代になったなとおもいます。

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