閑話② 8人の天才
いやーおはようございます!!
夜勤明けはしんどいですねー(棒読み)
さて、作者的にはこれから激熱々展開が連続しているんですが、本当停止したのが勿体ないなぁーみたいな(笑)
多分次の話でこの話は終わって、閑話③が始まります!タイトルは……お楽しみに。
ジジジとノイズ音が聞こえる。
聞こえたその直後、ノイズ音が無くなったと思えば⋯ゆっくりと曲が流れ始めたのだ。
『〜♪』
聞くとおよそのところ、クラシックだろう。
貴族が聞くようなバロック調の合唱。
「あー、創一達地点の手伝いしなくていいの?」
──────────
グロリア・ベイカー(16)┃
⋯⋯またの名を、狙撃の天才
──────────
「ん〜いらないと思うけどねぇ〜」
ヴン、ヴン。
沢山のウインドウを見ながら淡々とそう呟くニック。
──────────
ニック・スコット(14)┃
⋯⋯またの名を、機械の天才
──────────
「ニック〜、いい加減その長い前髪切んなよ〜」
「え?嫌だよ、集中してる時の目つきが酷いってリードに何度言われたことか」
グロリアの言葉に自身のダーグブロンド色をしている前髪を触りながらウインドウを見続けるニック。
「お〜い!」
「あ、鬱陶しい⋯⋯方じゃなかった」
鬱陶しい方ではないが、返り血まみれの軍服を着ながらニックたちに向かって手を振る数人の影。
「お疲れ、マキナとシェイ」
「ニックもな!」
──────────────
マキナ・テイラー・ガルシア(18)┃
⋯⋯またの名を、体術の天才
──────────────
「そうよ〜?ニックの仕事だって立派なんだからっ!」
「そう?褒めても何も出ないけどね」
───────────
シェイラ・エドワーズ(13)┃
⋯⋯またの名を、短剣術の天才
───────────
「ん〜!疲れたぁ〜、あれ?創一の班はまだ?」
───────────
ライアン・トンプソン(15)┃
⋯⋯またの名を、斧の天才
───────────
「今、二人の会話聞いてなかったの?遅れてるようよ?でも、どうせあの人なんだからまた呑気に戦いを楽しんでるんじゃない?」
─────────────
ダリア・ローグ・バネット(17)┃
⋯⋯またの名を、剣の天才
─────────────
「うぇ〜あれ?コルトは?」
ライアンが周りをキョロキョロしながら行方を探す。
「あの子は今残党を一人残らず対処中。じきに帰ってくるよ」
「そうか!ニック!」
ライアンがニックの両肩をガシッと掴む。
「な、何?」
「トイレは?」
「あっち。え?なんで僕に聞いたの?」
「一番トイレを使うと思ったからだ!」
そう元気に言い放って、当たり前のようにトイレに向かうライアン。
「え?⋯⋯⋯⋯え?」
全く理解出来ないニックはしばらく瞬きをする事を忘れていた。
---◇◇◇
「うっ!ガハッ!」
ある軍人が子供に刃物を振りおろそうとした瞬間にハイキックを貰う。そしてそのまま連続して華麗な回転をしながら後ろ回しの蹴りを直で貰う。
1回目は普通の上回し蹴りを行い、蹴り終わった反動を使って同じ流れを逆回転しながら反対に蹴る技。
──二段上交差回し蹴り。
「くっ⋯⋯!相手はガキだ!早く撃て!!」
10人以上の軍人が小銃をコルト目掛けて発射する。
だが少年コルトは悪魔じみた笑みを浮かべながら、自身へと迫る音速を超える弾丸の雨を⋯障害物を利用して全て躱す。突き刺すエメラルドグリーンのような綺麗な瞳孔は銃弾の通り道を全て見えているような動きを見せる。
そのまま当たり前のように銃弾を躱し、流れるように──腰に据えている一本の鞘と柄に手をかけながら、その身からは考えられない程の速度で軍人の目の前に一瞬で移動した。
狂気的な笑みとは打って変わって無言で両目を閉じるコルト。
"※※※※※、※※※※※"
「何が─」
目の前に映る無数の斬撃。
様々な角度からやってくるその斬撃の残滓を見ながら、軍人の数人は発することなくその場でバラバラ死体となって大地と抱擁を交わす。
「なんなんだ⋯⋯あの人間は」
残り少ない残党の一人がそう言葉を漏らす。
そう。目の前で自分達に背を向けながら一本の刀を抜き、数十の死体を見下ろすその少年の姿は⋯⋯まるで神に愛された死神のような空気感を発していた。
威圧?重圧?どれも違う。
何も感じない。
ただそこに死体が山となって並んでいるだけ。
寵愛を受けた一人の少年は嗤っている。己の強さを確信し、残る自身の背後に立っている案山子同然の人間が。
「後はお前らだけだ。創一とこの後特訓があるんだ⋯⋯さっさと終わらせないと」
ギラギラ輝くその双眸は、笑っているようにも見えるし、嗤っているようにも視える。
「⋯⋯っ」
「久し振りに抜いてやったよ?実戦で使い物にならない?オイオイ──」
バンッ──!
「何っ!?」
撃った瞬間にはもう懐に移動しており、その中で待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる少年の姿が。
ザシュ──。
その数秒。
激しい程までに鳴り響いた銃声と、指示が聞こえていたのが止み──すっかり森の中は元通りの状態に戻った。
ただ一つ違うのは⋯⋯そこに何十という死体と、バラバラになった数え切れない死体らしき肉片が落ちているだけ。
音が止む。そして数分後には──野生動物がその死体を貪り始める。
「さっさと帰らなきゃ」
────────
コルト・ハリス(11)┃
⋯⋯またの名を、刀の天才
────────
そう一言消えるように呟いた後──少年は合流地点へと帰還した。
--◇◇◇
「くそっ!何が起こってるってんだよ!!」
複数の場所から噴煙が立ち上り、雄叫びに近い怒鳴り声がどの箇所からも聞こえる。
空いた小さい窪みを踏みしめ、溜まった水がぽちゃんと音を鳴らしながら飛び散る。そのまま駆けながら大木の裏に隠れる一人の少女の名前はシンディ。
彼女は世で実現不可能と言われている二丁拳銃スタイルである。
『まさか』そう言いたい気持ちはよく分かる。
だが──。
"最強"、"強者"、"最先端"⋯⋯我々人間の尺度で考えるには、少々至らなすぎると思う。
何故かって?そりゃきっとこれを読んでいるあなたも──"普通"の人間だからだ。
誠に残念な気持ちではあるが、どうやら⋯⋯普通の人間は、頂点⋯まぁ呼び名はいい。そのピラミッドの上に行くことすらままならない。
どの分野も、普通という常識や概念で覆われている間は──きっとそれはできないであろう。
そう、私は今、その頂点と言われた少年少女の活躍を──この目で見ることになったのだ。
私の名前はヒューズ・ジョンソン。現在──。
「助けて〜っ!!!!」
「な〜にやってんだよぉ〜?捕まれ!」
ケラケラ笑いながら大木の裏に隠れるヒューズとリチャード。
「こ、こんな無茶な動き⋯⋯あってはなりません!」
「ばぁ〜か。そんな普通なんかで作戦を練ってるから──普通なんだよっ」
リチャードがヘラへラしながらヒューズの額に指で軽く突いている。
「⋯⋯つ〜」
「さて、創一は一人で4部隊受けてるようだし、後はシンシアに任せるとして──」
「⋯⋯?」
リチャードがヒューズの目を見る。
「そうだな。見学でもするか」
「⋯⋯これ実戦だよね?リチャード君?」
「えぇ?そうだけど〜?」
いつものようにヘラヘラした口調で言葉をヒューズに返すリチャード。
バンバンバンバン──。
銃声が4つ。
その直後に4人の頭が貫かれ、パタンと倒れる。
そしてありえないほど華麗に再装填をして更に敵陣地へとストレートに進んでいく。
⋯⋯そんな事あっていいのだろうか?
ヒューズは固定概念の崩壊を感じた。
「撃てー!撃てー!相手は一っ!!!」
その瞬間にヘッドショット。
直後同時に二方向から銃声が鳴るも、当たり前のように飛び上がって枝に捕まりながら片手で一つの部隊を潰している。
再装填しながら裏側へと回り込み、そのままかなりの距離を飛んでいく。まるでワイヤーアクションのようだ。あんな芸当⋯⋯とても出来るものじゃない。
走りながら二丁拳銃を構え、交互に兵士目掛けてトリガーを弾く。
低く重たいであろう特徴的な銃声が20回も聞こえない間に──声が一つ一つ消えていくのを感じる。
**
**
『創一?』と無線器で創一に向かって話すシンディ。
『どうした?』
「一部隊終わったよ?」
『あ~おっけ〜、先帰ってていいぞ?』
「あい〜」
軽快な会話が終わり、シンディが隠れている二人の方へと向かう。
「終わったよ〜?」
「おぉ?本当かぁ?」
やっと、やっとだ!
やっとこの地獄みたいな場所から帰れる!!何度死ぬかと思ったことか⋯⋯!
あれから約20分。
地獄のような銃撃戦が行われたがすぐに音は止み、二丁拳銃を持ったまま両手を開き、まるでオーケストラの指揮者のようなシンディの後ろ姿が映った。⋯⋯⋯⋯大量の死体と共に。
──────────
シンディ・ゴールド(10)┃
⋯⋯またの名を、銃の天才。伝説の一人。
──────────
「お〜!終わったか終わったか!」
「リードも戦いなさいよ!」
ゲンコツを貰うリードがヘラヘラしながら適当に返事を返している。そんな姿を見たヒューズは疑問を覚えた。
あれ?確か⋯⋯この人も強かったはずでは?史上最高部隊レベルに全員が強いって言ってたはずなのに。余裕からか?まぁいいっか!
⋯今はお家に帰りたい。
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