第8話「船旅は命がけ?!」



銃弾蔓延る銃世界「トリガーバレット」、そこに迷い込んだ、ただのアニメオタクの少女ゆき。このアニメのラスボスたるデリンジャーの未来を予言し、更に主人公バレットの次の目的を予言した彼女にはある目的があった。


「ねぇ、バレル君。」


列車に揺られるバレルに声をかける。

「なんだよ?」


「バレル君は……。」


ガタンッ。

列車が止まる。

「着いたみたいだな。行くぞ。」


「へ?う、うん!!」


慌てて列車を降りる。辺りを確認した。


「へ?でもここって、まだ西のアジトじゃ……。」

ゆきの言葉を無視してバレルはどんどん駅の中を歩いて行く。

「待って!どこへ行くの?!」


「ここからは川を船で移動する。その方が速い。」


川?小説もアニメもバレットメインに書かれていたが、川で西のアジトへ移動する手段は描かれていなかった。その為、ゆきは移動手段に驚いた。


「今度は船旅なんだねっ?!」

船旅にはしゃぐ女を見てバレルは少し不機嫌になった。

「何をはしゃいでいる?遊びに行くんじゃないんだぞ?!」

どんどんと前を歩いていくバレルの後を慌てて追う。

「わ、わかってるってば!!」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


船に乗った二人は部屋に入る。


「狭っ。」


「うるさい。お前が来たのは想定外だったんだから仕方ないだろ?!」


そう、本当なら船の共同の大部屋に宿泊する予定だったのだが、バレル君は私を気遣い、急遽個室に変えてもらったのだ。


「ありがとう!バレル君!ところでっーー」


ガタンッ。


船が揺れる。ゆきはバランスを崩し転びかける。バランスを崩して倒れかけた場所にバレルがいた。


「しっかりしろ。」


「う、うん。」


バレルに抱き止められ、顔が熱くなり、胸が高鳴った。揺れが収まり、バレルから離れる。


だ、ダメだーーッ!!??私はデリンジャー様一筋なのにぃいいいっ?!ダメだよっ!!


顔をパシパシと叩いて渇を入れる。

それを見たバレルは何をやっているんだ。この変な生き物は………、と呆れかえっていた。

「はぁ。」


その女の謎の行動にバレルはため息をつく一方だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


朝になる、起きてから部屋の外の景色を見に甲板に出た。バレル君はまだ、部屋で寝ている。寝顔は可愛かった。殴らなきゃ可愛いのにと、つくづくゆきは思っていた。

甲板からの景色は綺麗で、運河の景色を一望出来た。風が気持ち良く吹き付けてくる。バレル君から聞いた話しだが、この運河は西のアジトの街までの交通手段の一つであり、商業船も行き来しているらしい。しかし、朝の気持ちのいい空気は次の瞬間一変した。


「きゃーーーっ?!」

突然悲鳴が聞こえる。声のする方へ行くと女の人が男達に捕まり、銃口を向けられている。


「大人しくしやがれっ!!」


「な、何?!」

ゆきは状況が飲み込めない。男の一人が叫ぶ。


「この船は俺達が乗っ取ったっ!!大人しく言うことを聞けっ!!」


ど、ど、どうすればっ?!そうこうしていると男達は無差別に銃を乱射する。


「黙って言うことを聞きやがれっ!!」


「金と貴金属類を全部渡せっ!!」


男達は口々に要求する。


「それが終わったら、船を西の街(グレースタウン)に着くまでの途中の森で俺達を下ろせっ!!いいなっ!!」


乗客が捕まっていると言う事もあり、下手に動けない。

こうして、船は男達に乗っ取られ私達は縛られ一ヶ所に着く集められた。


まさかアニメにも小説にもない話しでこんな眼に会うとは……とほほ。これじゃ、目的を果たす前に死んじゃうかも………。苦笑いする私の隣で小さな女の子が泣いていた。


「わぁーんっ!お母さーんっ!!怖いよぉ、どこぉおおっ?!」


どうやら母親とはぐれたらしい。


「大丈夫だよ。泣かないで?直ぐに助かるからね?」


私はその子を慰めた。女の子は一向に泣き止まない。


「うるせぇ!!」


バンッ。銃弾は女の子の足元を貫通する。


「ひっひぃぐっ!!ええええんっ!!」


女の子は余計に怖くなり泣き叫んだ。


「ぶっ殺すっ!!」


銃口が再び女の子に向き、引き金が引かれそうになる。

ダメッ!!私は咄嗟に女の子の前に体を乗り出した。

バンッ。


「がぁっ?!」

撃たれたかと冷や汗をかく私の予想とは裏腹に、気が付くと銃を持っていた男は悶え苦しんでいる。


「ふざけるなっ!ここはデリンジャーの“島”だっ!勝手なマネは許されないっ!!」


甲板には銃を持って、そう叫ぶバレルの姿があった。


「バレル君っ!!」

あれ?そう言えば銃は私が置いてきて持ってない筈じゃ……?


「なっ?!バレル?!だと?!」


「デリンジャーの片腕じゃねぇかっ?!」


「ふざけるなっ!!なんでここにそんなヤツが?!」


男達はバレルの名を聞いて震え上がった。しかし、バレルに銃を持った腕を撃たれて悶え苦しんでいた男は臆する事なく銃をバレルに向ける。


「んだよっ!!デリンジャーなんざ怖くねぇっ!!ふざけやがってっ!!」


バレルを撃とうとするが逆に反対側の腕も撃ち返された。

そうして他の男達も銃を撃とうとするが、あっという間にバレルに全員撃ち抜かれ、動けなくなってしまった。


「バ、バレル君凄いっ!!」


「バカ女、何してるんだ!こんな事になってるならもっと早く起こせっ!」


「いや、起こしに行く暇もなくって……とほほ。て、バカとは?」


「お前意外にいないだろっ?!」


話している間に捕まえられた男の一人が持っていた銃でバレルを狙う。それにゆきは気付いた。咄嗟にバレルに突進する。

「バレル君っ!!」


「なっ?!」

バレルと共にその場に倒れこんだ。

「くそっ!」

バンッ。どさっ。倒れこんで直ぐにバレルは男に向かって銃弾を撃つ。男の銃弾は外れ、男の銃はバレルに撃たれ破壊された。


「バレル君大丈夫っ?!ーー」


「ああ、問題なっーー」


至近距離でお互いに眼が合う。私は思わず息を飲んだ。鼓動が高鳴る。対してバレルも年頃の女の子と至近距離で眼が合った事から心臓が思わず高鳴る。二人は少しの間そのまま固まったが直ぐに動いた。


「い、いつまで乗ってるんだよ?バカ女っ!」

バレルは顔を背けてそう言う。


「ご、ごめんっ!」


ゆきは直ぐにバレルの上から退いた。


ああー、びっくりしたぁああああっ?!?!第二押しだけあって、顔だけはいいっ!!(愛想はないがっ!)それにしてもさすがはバレル君っ!!凄い銃の腕前っ!!

そう思うゆきに対して、バレルは少し照れくさそうにしてから直ぐに男達を見やる。船にいた人達と共に男達の全ての武器を取り上げた。

こうして、男達は捕らえられ、船は無事に西の街へと向かって行く。


乗客を救ったバレルはヒーローのように扱われるかと思ったがそうでもない。周りは冷ややかな眼でバレルを見る。


「あの、デリンジャーの?」


「やだ、怖いわ。」


「私達まで殺される。」

そう言う中、解放されたさっきの女の子がバレルに歩み寄った。


「お兄ちゃん、ありがとう!」


女の子はバレルに微笑んだ。バレルは照れ臭そうに無言で頭をかいた。


「お姉ちゃんも!」


「いえいえ、私は何もしてないよ?」


母親らしき人が寄って来てお礼をいい、頭を下げて直ぐに立ち去った。あまり関わり合いになりたくはないようだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


甲板に再び出ているとバレルが来た。


「バカ女、一人で行動するな!」


「もう大丈夫だよっ!バレル君のおかげで!」


「お前は川に落ちるかもしれないだろ?」


「はぁ?!そんなことないってばっ!」


「ところでバレル君、さっきの銃どうしたの?確か銃は持ってなかった筈?」


「護身用にいつも胸ポケットに入れてるヤツだ。当たり前だろ?」


「ん?そう言えばバレル君持ってたような?」


アニメの第二十話で胸ポケットから銃を出した気がする。


「はぁ?どういう意味だ?」


バレルはその女の話しがいまいち意味がわからなかった。

ゆきは改めて自らの目的を果たす為に奮闘する。それは…………。


「バレル君。」


「なんだ?」


「バレル君は……。」


「?」


「デリンジャー様が好き?」


「………………」


「私は好きだよ。」


「……ファンだからだろ?」


「そう、だから……」


何かを、ゆきが言った瞬間に汽笛がなる。


「なんだ?」


「……ううん、何でもない!!」


「?」


バレルは少し気になったが、それ以上ゆきは何も言わなかった。


船が西の街に到着するまであと少し、ゆきはそれまでの船旅を楽しんだ。

 

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