第2話「女の子を好きになりましょう!」

顔を見合わせる私と早桜そうざくら、見ていると何故か今まで感じたことがない感覚がした。

「《あ……》」

そのまま固まってしまった。

すると咲木さきぎが手を叩いて、私と早桜そうざくらは我に返った。

「入口で立ち話をしていても仕方なくないか?」

「た、確かにそうだね。」

「じゃ、また後でね。」

と咲木と楓花ふうかそう言って、私たちは自分の席に帰って、座った。

「やっぱり、早桜そうざくらの隣りだったんだね。」

「むー!信じてなかったんだー」

「う、うん……」

「もぉ、そうちょっと人を信じないとダメだよ!」

「うん、善処ぜんしょする。」

「そういえば、学校に入ったらでっかい機械があったよね。」

「うん、あった。一体あれは何なのだろう?」

「私も詳しいことは分からないけど、あれはきっとスキャナーだよ。」

「スキャナー?」

「うん。私、早く学校に着いちゃって、教室で待とうと思って中に入ったんだよね。」

「そしたら、でっかい機械を設置している真っ最中だったんだよ。」

「少しして、私は気を失って、気付いたら教室にいたんだ。」

「だ、大丈夫だった?」

「うん!なんとも無かったよ。」

「良かった。もし早桜そうざくらに何もなくて。」

「ふふ、気遣ってありがとね。」

それからも早桜そうざくらとたわいもない会話をしていた。

すると、続々と生徒が登校し、学校のチャイムが鳴った。

だけど、先生が来る気配がない。

「あれ?先生は?」

「さぁ?私にも分からない。」

と、その時――

「《みなさんおはようございます》」

と女の子の声が聞こえた。

「うっ、なんだこれ……頭の中に声が……」

「《突然ごめんなさい……この学校には先生はいません》」

「《そのためこのような方法で連絡します。》」

「《ご了承ください。》」

「《詳細の連絡は、皆さんのスマホにお送りしています。》」

「《学校のルールなので、必ず読んで下さい。》」

「《ではこれで朝のホームルームは終わりです。》」

「《では、みなさんお持ちかねの新学期最初の授業です。》」

「《新学期の最初の授業は……隣の席の女の子のことを好きになってもらいます♥》」

「え?……」

「うん?」

「【ええええええええええええ!!!】」

教室中に全員の声が響き渡った。

そりゃそうだ。いきなり隣の席の女の子を好きなってもらうなんて、みんなビックリするに決まっている。

「全く、いきなり何を言っているんだか。」

「ねぇ風香。私ね、あなたのこと……好きだよ。」

「………」

「へ?」

風香かおりのこと、好きってことだよ!」

「て、ことは?」

すると早桜は満面の笑みで

「うん!これからよろしくね風香かおり!」

と、言うのだった。


新学期の最初の授業も何とか終わった。

次の授業はあるのか分からないが、現在は休み時間。

周りを見たら、ほぼ隣と仲良くなっていた。

「あんなこと言ってビックリしたけど、仲良くなったんだ。」

「ん?あの子どうしたんだろ?」

私は後ろの席で一人でいた女の子が気になった。

「よし!ちょっと声をかけてみよっと。」

「ねぇ、隣の席の女の子は休み?」

「う、うん。お休み……だと思う。」

「思う?知らないの?」

「……うん、私、分からない。」

「そっか、私は枝心風香しんちゅうそうざくらよ。よろしくね。」

「わ、私は日美ひみ、です。よ、よろしくです。」

「ごめんね。急に話しかけて。」

「だ、大丈夫。ありがとう。」

そして私は、軽く手を振って自席に戻った。


次の授業も同じだったため、私は先ほど送られてきた学校のルールを読んでいた。

「なるほど、これは……」

そこには、なんとも言えないことが書かれていた。

「ん?どうしたの?風香かおり?」

「いや、このルールがちょっと……」

「あぁ、それね。私は別にいいと思うな。」

「『女の子を大切にする』っていいことじゃない!」

「うん、それはそうなんだけど。」

私はスマホの画面を早桜そうざくらに見せつけた。


・女の子を大切にすること。

・隣りの女の子と彼女になること。

・必ずペアーで行動すること。彼女である必要はない。

但し、愛する人は、隣の席の女の子であること。

・イチャイチャする場合は、周りに見られないようにする。

・特に勉強する必要はない。

・寮は二人部屋で、同じベットで寝ること。

・整理整頓をすること。

・先生は居ないので生徒同士で協力すること。

・土日の外出は、彼女と一緒に行動するなら許可する。

・好きな女の子を増やすことは可能だが、強引に奪うのは禁止。

・立ち入り禁止エリアには入らないこと。

・ルールはその都度変更になる可能性があります。変更される時は、事前に連絡します。


「1番最初のこれって……百合ってやつだよね?」

「うん、そうだね。百合だね。でもGLかもしれないね。」

そう言って、私の手を握った。

「このルールが何の為に作られたのか、それは分からないけど。」

「いいじゃない、私は好きだから。百合もGLも。」

「私は、あなたのことが好きだから。」

「うぐ……そ、そんなに堂々と言われると胸が……」

「ふふ、可愛いね!」

「(どうして、早桜はこんな恥ずかしいことが言えるのだろう。)」

「(今思えば、私もドキドキしている。)」

「(これってもしかして……)」

「(私も早桜そうざくらのことが、好きになっちゃったってこと?)」

「(どど、どうしよう!こんなこと初めてだからどうすれば!)」

と、テンパっていると早桜そうざくらは私の手を掴んで、一緒に教室から出る。

早桜を後ろからちゃんと見たのは初めてだった。

「ど、どういうこと?どうして教室から出たの?」

「それはね……こういうことをするだよ!」

すると早桜そうざくらは、くるっと前を向いて、一瞬にして目の前まで接近し、私の唇にキスをしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る