ひっくり返って怪我をする

 競技会まであと半月という時に、大事件が起きました。

 あーこがインストラクターを乗せてひっくり返ってしまい、飛節を擦りむく怪我をしてしまったのです。


 以前にも同じようなことをやらかしていました。

 でも、引っ越してからのあーこがあまりにもいい子だったので、すっかり安心してしまっていました。

 インストラクターにもひっくり返ることがある、とお伝えしていたのですが、そんな様子を微塵も感じさせず、何度か乗って、これ大丈夫じゃないか? と、思い始めていた矢先でした。

 元々あーこは腹帯に敏感で、締める時も怒るし、締めたら眠くなるし、不用意に締めるとひっくり返る、ということがありました。

 そんなに強く締めていないはずなのですが、締める時に過去の嫌な思い出がフラッシュバックするかのようでした。


 馬装を終えてまたがり、その場で腹帯を締めようとした時でした。

 急にバタバタと後退し始めて、洗い場のコンクリートの上に乗ったかと思うと、さらに後退して、尻餅をついてしまいました。

 インストラクターも太腿を打って、少し悶絶していて、うわぁ大変、あーこも怪我をして、もう目の前が真っ白です。

 幸い、人馬ともに怪我は大したことがなく、あーこはその後、少し回して歩様に問題ないことを確認し、10分ほど乗りました。

 人を落としたまま、大きな怪我もないのにそのまま馬装を解くのは、あまりいいことではない、ひっくり返って人を落とせば楽になる、と勉強させてしまうからです。


 結局、その日は練習と言えるだけの練習は乗れず、軽く擦りむいただけでしたが、念の為、化膿しないように注射をうって早めに切り上げです。

 翌日、怪我の具合が心配でしたが、早めの対処が良かったのか、問題なさそうです。

 でも、乗って運動してみないことにはわかりません。

 数日休ませて、次に乗ってもらうまでは、ドキドキしました。

 エントリーしているので、出られなくなっても費用はかかりますし、だからと言って無理をして出すわけにもいかないので、判断に迷うところです。

 ダメージが少なかったので、デビューできないというわけではありませんが、後は精神的にどうなのか……不安が募ります。

 インストラクターが大丈夫そうだ、と言ってはくれましたが、またひっくり返って人に怪我をさせるような馬じゃダメじゃん、とガッカリしてしまいました。

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