騎乗を封印
さて、競技に出ると決めましたが、時間はそれほどありません。
あーこは、競技経験はありませんが、私が2ヶ月間だけ持っていた時には、重点的にA2の練習をしていましたし、まこさんが乗っている時もA2の練習をかなりしました。FさんもA2をあーこで回ったことがあります。
つまり、あーこにとっては、決して初めてチャレンジする経路ではない、やることはしっかりわかっている、という経路です。
問題は、故障がちになってからはやっていない、放牧生活で体力が落ちている、それと会場に行っても問題ないかどうか、です。
ただ、出てくれる人がインストラクターですから、久しぶりの経路でも問題なくできるだろうし、会場で入れ込んでしまっても、まぁ、乗り手の経験でなんとかしてくれるでしょう、それでダメなら仕方がありません。
問題は、故障の心配です。
あーこは、今までも何度か競技会に連れて行こうとしたけれど、その度に故障に見舞われてエントリーできなかった過去があります。
ものすごく気をつけて乗っていたはずなのに、急に破行して、1ヶ月休養せざるを得ない状況に陥ったりと、予測が立たないのです。
今回も、そうなってしまわないだろうか? と、心配です。
げっそり痩せてしまって、体力がないのも心配です。
馬栓棒に顎を乗せて寝落ちそうになっている姿を何度も見て、首吊りにならないだろうか? と心配しました。
レッスン馬時代は、ほぼ毎日乗られていて、時に1日2鞍も……という日もありました。私たちの馬になっても、故障の時以外は、週休2日ペースで乗っていたのです。
それが、もう1年間も放牧生活、週1回乗れればいいか、みたいなペースに落ちていました。
急に特訓したところで、ばてて終わりです。
競技会に行くと決めてから、1回乗ってみて……これは、競技会が終わるまでは、私は乗らない方がいいな、と思いました。
私にはシェルもいるし、どうしてもあーこに乗りたいという状況でもありません。
一番怖いのは故障することですし、体力がないのが問題ですから、頑張りすぎてばててしまっては元も子もありません。
A2を踏んで帰ってくるだけの実力は、あーこには十分あると思いますから、インストラクターとの折り合いをつけてもらう方に集中した方がいい、と判断しました。
そこで、インストラクターの都合のいい日に、週2回乗ってもらい、週1回は私が調馬索で回して軽く運動する、というパターンで、競技に向かうことにしました。
インストラクターにも、いい成績はいらない、今のあーこの実力を出せればそれで十分です、とお伝えしました。
こうして、私は裏方へと回り、すっかりお任せのまるで競走馬オーナーのような感覚で、競技会を目指すこととなりました。
勝負事に弱い私には、いい立ち位置かも知れません。
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