シェルとの絆
シェルは、4歳から競技会に出ていました。
年3回、約10年間、出続けたのかな? 時には調子が出ない時が1年あったりもしたけれど、競技に出るたびに絆が深まっていったように思います。
特に、私とシェルは、インストラクターの下乗りもなく、自分達でなんとかしてきたので、その達成感は半端じゃなかったです。
万年初心者並みの下手くそおばさんです。
きちんと下乗りしてもらえばよかったんじゃ? とか、きちんとプロに馬を調教してもらえば、とか、調整してもらえば、とか、言われたこともありますが、確かにそうすればもっといい成績が出たのかも知れませんが、だからこそ深い絆ができたのだ、と思います。
それに、乗り手としてはかなりダメダメな私が、プロに調整してもらえたところで、乗りこなせるとは思えない、むしろ、自分ができる範囲での騎乗だったから、ぽっこりぽっこりでパッとしないけれど、リスクを抱えずに参加できていたのかな? と思うのです。
私の目標は、競技会でいい成績をおさめることではなく、シェルと一緒にやってきたことを明らかにすることでした。
途中からは頭打ちになってしまい、成績が伸びることも上のクラスにチャレンジすることもできませんでしたが、それでも、シェルと仲良くなる、という目的には沿っていました。
シェルの素質もあって、ブルーリボンもふたつもらいました。
そのうちのひとつは、L2課目で、大雨のジャブジャブ馬場で、他の人馬が足を取られて失敗したため、ハーフパスも不完全なままのシェルが優勝してしまった、というラッキーなものでした。
ジャッジからは、あの出来でブルーリボンをあげたくない! と言われてしまったくらいの低レベルでしたが、勝ちは勝ちです。
インンストラクターにほぼお任せで、競技前にさっと乗り替わり本番に挑むような人たちに、負けたとしても仕方がない、こっちは素人なんだから、という逃げ道を作りつつ、そういう人たちに勝ったとなれば、むふふ……と内心笑ってしまう、それが私の競技生活だったと思います。
コロナ禍前の2019年9月が最後の大会でした。
この年のシェルは、かなり覚醒していて、私が乗り切れないほどの馬になりつつありました。
初心者にも安心して乗れる馬だったのに、正直、人を乗せるのが怖いかも? いや、むしろ、初心者の方が乗れて、少し乗れる人なら乗りこなせないかも?
私が乗れるのは、長年の相棒という安心感からであって、他の人が乗ると緊張して暴走はしないものの、止まらなくなってしまったり……があるのです。
これからが楽しみだ、というところで、コロナの関係で競技に出なくなり、その間に、ちょっと頑張ってみよう、上のクラスにチャレンジできるようにしてみよう、などと欲が出ました。
それが、ちょっと失敗だったのかも知れません。
冬から歩様がおかしくなりだし、それでもいい時があったのですが、翌年の6月ごろからこれはおかしいな、と思うようになり。
1年くらいかけてどんどん悪くなり、とてもしっかり乗ろうと思えない馬になってしまいました。
秋口には気分転換に障害を飛んでみたり、レッスンを受けてみたりと、ちょっと違うことをしたり、別の人に乗ってもらって意見を聞いたりもしたけれど。
「甘やかしているんじゃないの?」で終わってしまう。
今から思えば、私がもっと自分の感覚というのを信じることができればよかった。
引っ越してからも、シェルは調子が戻らず。
それでも以前よりはマシになって、競技会にいってみようか? クラブ内大会なら出られるかな? などとも思ったけれど、やはり、経路を踏むまでのことができません。
オリンピックライダーの講習も、最後の最後まで迷いましたが、この状態でプロを乗せてしまえば、逆に馬が壊れてしまうと思い、諦めました。
元々、競技を目指して乗馬をしているわけではないので、競技に出られないのは別にいいのですが、競技に出られないシェルというのがちょっと悲しい。
そんな馬にしてしまったのも、私の責任です。
何も明るい未来が見えない。
ただ漫然と日々を過ごすだけしかない。
しかも、乗れば乗るほど、馬が傷んでるのでは、乗って楽しいとも思えない。
引退の文字がちらちらとよぎりました。
そんな時、もう諦めて忘れていた夢が蘇ってきたのです。
あーこを競技会デビューさせよう。
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