いよいよ引っ越し!

 引っ越すことが決まっても、私はすぐにホースフレンドファームにそのことを伝えられずにいました。

 と言うのも、出ていくはずの馬が、予定日を1か月過ぎても、一向に出ていかなかったからです。

 その馬にお世話になった会員さんが、お別れに綺麗にお手入れしても、最後にまたがらせてもらって記念撮影しても、あれれ? まだいる? となっていました。

 ここでも色々な事情が絡んでいるようでした。

 あーこの前に入る予定だった馬が、突然キャンセルになったように、何かがあって出ていかないことになる可能性も考えられ、私はその馬が本当に引退してホーストラストに移動するまで、待つことにしていたのです。


 ホースフレンドファームさんには、とてもよくしてもらっていました。

 出ていくことを告げるのは、とても言いにくいことです。

 でも、また、それが突然のさよならになってしまっても、向こうは困ってしまうでしょう。だから、言うタイミングにとても気を使いました。

 決まった時点で話してしまい、それが、やっぱりお世話になります、となるような、気分の悪い思いはしたくない、まぁそれは、土壇場でこの話が頓挫したらどうしよう? という私の不安の表れでもありますが。

 ジリジリした日々が続きました。

 さっさと馬を追い出せと言っているようで、いつ出ていくんですか? とも聞きにくく、もしかしたら、頓挫なのかもな、と思い始めた頃、やっと話が進んできました。


 私がかなり大変な思いをして通っていたことを知っていたので、ホースフレンドファームさんも、快くあーこを送り出してくれました。

 乗馬引退後に、また来てね、引退後に来る場所があるって、いいことだよ、と言ってくれました。

 確かに、です。

 あーこの引っ越し先を探していた昨年、私は散々思い知らされました。

 最終手段は引退してホーストラスト……などと考えていたのに、そのホーストラストも行って話を聞いてみると、すでに順番待ちで5頭先にいると言われました。

 馬を置いてくれる場所を探すのも、容易ではありません。



 あーこの引っ越しは、8月26日となりました。

 雨模様の天気の中、朝のうちに白老に行き、あーこに乗り納め騎乗しました。輸送で疲労もあるだろうから、軽い運動です。

 その後、荷物をまとめて、馬運車を待ちました。

 輸送用の尾巻きや輸送用肢巻があるはずだ、と思っていたのですが、どうもシェルの方の荷物に入れていたようで、仕方がないので、運動用肢巻をしました。

 シャンプーした後、小さな放牧場でのんびりまったりしていたあーこは、それを見て、逃げ出しました。いや、もう運動じゃないってば!


 乗り終わった後も、広い放牧場にあーこが来ないことで、いつもと違う雰囲気を感じた馬が、ヒヒーン、ヒヒーンといななき出して、その後、疝痛で倒れてしまいました。重たいものではないのですが、馬の繊細さを感じる事件でした。

 その馬のケアで大変だったので、あーこの方はみんなでお見送り……という状態ではなく、馬運車つきました、ありがとうございます、さようなら、で、日常の1ページのような感じになりました。


 あーこは私が馬運車に入れましたが、駄々をこねることもなくすんなり入りました。

 その後も、馬運車の中では大人しく、いい子にしていたようです。

 引っ越し先についた後も、ソワソワしていたもののとても大人しくしていました。

 ホースフレンドファームに着いたばかりの時よりも、はるかに落ち着いていて、まるでずっとここにいました、という顔をしていました。


 このようにして、あーこは約1年間のホースフレンドファームでの日々を終えて、また新たに乗馬としての日々を歩み始めたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る