靴を履く

 故障がちの馬だから仕方がない、無理させないように……と思いつつも、これだけ休んでいて、週2、3回の騎乗でボロボロになるのはおかしい、と要因を考えました。

 以前のクラブでは、週休2日のペースで乗っていてちょうどいい、と思っていたからです。

 要因を考えるのにも、週に1度や2度しか会わないのですから、すぐに思い当たることはありません。

 食べるものの量と質の問題なのか? とも考えました。

 でも、それもなさそうです。


 そして、ふと思い出したのが、ホーストラストからクラブへ移ってきた時のあーこのことです。

 ガリガリに痩せていて、お腹だけぽこん。蹄はまるでホタテのよう。

 サラブレッド全てがそうとは限りませんが、あーこは筋肉質な体質で、その筋肉は、どうやらしっかり運動しないとすぐに痩せてしまうようなのです。

 この頃は別のオーナーさんもいて、たまに乗っていたようですが、ホーストラストも放牧生活がメイン。

 ただ放牧場で走り回るだけでは、筋肉を維持できないのかも知れません。


 そして、ホタテのような蹄。

 以前のクラブの時から裸足にしていたのですが、ホースフレンドファームに移動してから、どんどんとホタテ化が進みました。

 どうやら後肢が腫れるのは、蹄が要因のようなのです。

 週2回も乗れば、放牧場でも破行するほどの時があり、どう考えても運動による故障とは思えませんでした。

 元々蹄を痛がる馬で、蹄鉄が必要と獣医さんに言われた馬です。

 でも、蹄鉄をつけてしまうと、筋肉が硬くなって凝りやすくなり、故障がちになってしまいます。

 週2、3回の騎乗なら問題ないと思っていたのですが、間違いだったようです。

 乗馬クラブの馬場は砂地で、クッション性があります。しかし、放牧場は土で草が生えていて、色々な刺激があります。

 おそらく、色々な刺激で蹄がホタテのように広がって、削れてきて痛くなってしまうのかも知れません。

 破行の原因は、右後肢の蹄を庇っているからでは?


 馬は、前肢に体重をより多くかけます。

 特にあーこのような前のめりの馬は、前肢に負担がかかります。

 なので、前肢には靴を買って履かせていました。でも、後肢には用意がありませんでした。

 どうしたものか? と思っていたら、YouTubeで知り合った方から、いい靴があるよ、と紹介してもらえました。

 スクートブーツという靴で、早速試してみると、破行がかなり改善されました。

 その様子から、あーこが運動を嫌がるのは、蹄が痛かったからだ、と判明しました。


 靴を履いて騎乗しても、放牧では裸足です。

 ある程度蹄を守れますが、完璧にカバーはできません。

 靴を履いても時々痛がることがあり、特に右手前は乗りにくいことがありました。

 やはり、馬装で眠たくなる日もありましたし、馬場へ行くのが嫌な日もありました。

 でも、脚部が腫れることは無くなりましたし、乗っているのがかわいそうな日もなくなりました。

 徐々に楽しくあーこに乗れるようになってきました。


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