モチベーション低下に悩む

 私は、週3回を目標に、白老通いを始めました。

 ゆとりある日は、シェルのところとハシゴしました。

 でも、慣れない車の長時間運転は、信じられないほど眠くなるし、高速道路を使えばお金がかかるし、行って帰ってくると、爆睡する有様でした。


 それでも、絶対にやるぞ! という強い気持ちがあれば、苦にならないものです。

 ところが、時間と共に、あーこを乗馬として全うさせる、というあれだけの強い思いも色褪せていってしまいました。

 ここまでくると、あーこへの思いよりも、あーこを引き取ることで巻き込んでしまった多くの人、夫をはじめ、まこさんやYouTubeの支援者のために、やらねばならぬ、と言い聞かせてやっていたように思います。

 白老通いをもっと頻度下げてもいいんじゃないかな? 乗馬じゃなくても、養老でいいんじゃないかな? YouTubeで支援してくれる人の中には、その方が馬にとってもいいと思っている人もいる、わかってくれるんじゃないのかな?

 そんな甘えがちらほら頭をよぎり、自分に鞭を打って通っていたように感じます。

 もちろん、行ってしまえば、癒しの空間とあーこがいて、幸せな気分になるのですが。


 なぜ、モチベーションが下がってしまうのか?

 それは、そもそも、私自身が馬に乗りたくてしょうがない人ではなく、やらねばならぬ「マスト」の気持ちでやっていたからでしょう。

 乗馬が楽しいのは、シェルも私を乗せて嬉しそうだ、と感じていたからです。

 ところが、そのシェルは、全く乗馬が楽しくなくなって、私を乗せるのが苦痛で、それを感じながら馬に乗っている私は、ちっとも乗馬が楽しくなくなってしまいました。

 なんとかシェルを元に戻したい、戻せるように努力しないと、という気持ちで、乗馬を続けているだけです。

 そんな中、あーこのところに行けば、思い切り馬に乗れるのか? といえば、そうでもありません。

 あーこもそれほど順調ではなく、馬装の間に眠そうになり、馬場まで意識を持たせて引っ張っていくのも大変な時もあり、思い切り乗れる状態ではありませんでした。

 しかも、思い切り乗ってしまったら、疲れ果てて、帰りの車の運転が不安になります。

 もういいかな……って湧き上がる甘えに、それでいいのか! と喝を入れる日々でした。


 追い討ちをかけたのが、至れり尽くせり、のありがたいクラブの在り方です。

 以前のクラブは、とても預託料が安いですが、馬房掃除を自分でやらなければなりません。

 自ずと、毎日行かなければならない、という「マスト」が発生していました。そして、自分の情熱が、その「マスト」を苦痛ではなく、むしろ、喜びとしていた部分があり、その喜びこそが、私のモチベーションだったのです。

 今のクラブの、あれもやってくれる、これもやってくれる、ありがたいな……と思う一方、私が頑張ってきたことは、もう頑張らなくてもいいことなんだ、と何か物足りなくなってきたのです。

 それなら、積極的にクラブに奉仕する、ってこともできましたが、2頭はしごの大変さが、そんな気持ちにもさせませんでした。

 乗れば、ガタゴトのシェルにつきあい、かつてのようにはいかない、だんだん自分の騎乗の形も崩れていき、あれもできない、これもできない、それを何とかする熱意もない……になっていき、あーこのことも誰かに任せたい、と思うようになりました。

 でも、そうなってしまえば、もう私は終わりです。


 シェルとあーこを引退させて乗馬をやめてしまったら、私は馬への熱意を失う。

 この2頭との絆はなくなる。

 過去に乗馬をやめた時の経験から、簡単に想像がつきました。

 遠くから眺めている馬には、私は興味をしめせないのです。馬好きではいられないのです。

 馬と一緒に歩めるから、私は馬が好きなんだ、そういう自分になってしまったんだ、という自覚があったからです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る