あーこの将来は?

愛されるレッスン馬を目指す?

 7月に本州に引っ越す……はずだったまこさんですが、ずっと北海道にいました。

 正しくは、時々本州に行って、だいたいは北海道にいる。道産子ちゃんを残して行きたくない、本当は北海道にいたい、という気持ちが強かったようです。

 そして今も、本州に引っ越したけれど、だいたいは北海道にいるかも? です。

 二重生活大丈夫? と心配ではありますが、私としては助かりました。

 しかも、翌年の1月か2月と言われていた車も、納車が早まり、10月中になんとかなり、燃費の良い私の車をまこさんが運転し、白老に通う、というパターンになりました。

 その間に、私も少しずつ車を運転できるようになり、まこさんが本州に引っ越した後は、自分で運転して白老まで行けるようになりました。ただし、ものすごく時間がかかりましたが。


 それなりに充実した楽しい日々でしたが、私には悩むことがありました。

 それは、あーこの将来です。

 まだ若いあーこを、このまま養老馬にしていいのか? ということです。

 週3回は乗りたい……と思っていましたが、1回、頑張って2回が限界でした。3回行ったこともありましたが、コンスタントに通うのは厳しく、週に一度も行けないこともありました。

 乗馬の疲れで眠気が来て、お茶とコーヒーとガムを噛みながらの、慣れない車の運転です。

 1年は頑張れるかもしれない、でも、徐々に体力も落ちていけば辛くなるかもしれない、しかも、夫が……彼はまさか私が本当に週3回白老に通うとは思わなかったらしく、白老通いを嫌がるようになりました。運転が心配なのです。

 このままでは、いくら乗馬として活躍してほしくても、養老馬の道まっしぐらです。

 まこさんに、私が行けない日でも、行って乗ってもいいよ、と言っても、さすがにそれはできないと、遠慮されてしまいます。

 現役乗馬を続けるには、フレンドファームでレッスンに使ってもらえる馬にするしかない、と思うようになりました。

 つまり、以前のクラブで思っていたところの「A2の鬼」を目指すのはやめて、まこさんが思っていたところの「初心者にも優しい馬」になってもらう道です。


 フレンドファームさんは大会にも参加したことがあり、ここで競技を目指すことも可能です。

 でも、競技経験の豊富な先代がほぼ引退し、どちらかといえば養老に力を入れているようで、お客さんもマイペースに馬に乗っている人が多く、競技を目指しそうな人はほとんどいません。A2の鬼は必要ないのです。

 それよりも、川辺への外乗に安心して連れて行ける馬、初心者でも安心して乗せられる馬が求められる、と考えたのです。


 そこで、私とまこさんは、馬場で基本的なことができるのはもちろん、外に慣らすことも練習しました。

 乗り終わった後は、外乗コースを引き馬したり、実際に乗って行ったり、最終的には川の近くまで行くことに成功しました。

 帰り道はソワソワしていましたが、他の馬と一緒なら、すぐに慣れて問題なく使えるでしょう。

 サラブレッドの中には、何度連れて行こうとしても、無理だった馬もいるそうです。

 でも、あーこは大丈夫……ただ。

 この辺りには鹿がたくさんいます。鹿は、人の気配を感じると、止まってじーっと様子を伺い、ある程度の距離に近づくと、急に逃げていくのです。

 馬場では鹿にも慣れたあーこでしたが、さすがに林の中ではびっくりして回転し、まこさんを落としてしまいました。

 サラブレッドにしては物見しない方のあーこですが、見てしまうと落ち着くまでに時間がかかり、しかも、動きにキレがあるので、乗っている方は落ちてしまいます。

 まこさんと私の見解は、外乗に使える馬だけれど、急激な動きに対処できるベテランさん限定、初心者が乗るにはちょっと……かもしれない、で一致しました。


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