ボス様の腰巾着に

 ホースフレンドファームは、どちらかというと養老牧場の色の濃い牧場です。

 広い放牧場があり、牝馬と騸馬に分かれて放牧されます。牡馬もいますが、牡馬は危険があるため、1頭だけの放牧となります。

 シェルの引っ越し先も広めの放牧場があり、こちらも牝馬と騸馬に分けて放牧します。牡馬はいません。


 私の予想では、シェルは放牧に早く慣れ、あーこは他の馬と喧嘩するのでは? と思っていました。

 シェルは友好的な性格ですし、あーこはテリトリ意識が高く、すぐに威嚇するタイプだからです。

 ところが、真逆でした。


 試しにおとなしい馬と一緒にしたところ、シェルはしつこくつきまとってポカンと蹴られ、キョトンとしていたらしく。

 クラブ側は、その様子を見て「他の馬との放牧は禁止」と判断したようです。

 柵越しに別の馬と、か、同じ場所にポニーと、という放牧生活を送っています。


 あーこは、最初は一緒に引っ越してきた馬と放牧され、意外と早い段階で、他の馬たちの群れに入ることができました。

 あーこはホーストラストで放牧生活を送っていました。

 その当時の話をホーストラストで聞いたのですが、一番弱っちくてポツンとしていた、という話でした。

 また、当初はやはりポニーと放牧されていたらしく、以前のクラブにそのポニーがたまたま移動の中継点で立ち寄った時、お互いにいななきあって大変でした。

 乗っていても、頻繁にいななくので、私もいななきと共にブルブルになってしまい、気持ち悪くて早めに切り上げた思い出が。

 馬がいななくと、思った以上にお腹が震えるんですよ。


 その話から、放牧は一匹狼風になるのでは? と想像していたのです。

 ところが、あーこはホーストラストで培った馬付き合いの仕方をいかんなく発揮、早速、群れのボスと思われる馬に近づき、腰巾着になりました。

 実際、ナンバー2の馬があーこを追い払おうとすると、ボス様の影に隠れて、庇ってもらおうとします。

 そして、実際にボス様に守ってもらい、群れの地位を確立したようです。

 放牧されると、ボス様ー! と追いかけて行っては、ボス様を慕う他の馬を追い払い、まるで、一番の子分のような顔をしています。

 その様子は数ヶ月に渡り、当初はボス様の一番刀のような振る舞いでした。


 ところが、数ヶ月後には、そのボス様に狼藉を働くようになり、ついにボス様に見放される羽目に。

 その頃には、すっかり自分の地位を確立したらしく、他の馬を引き連れている姿も見られ、もしかしたら、将来はボスの座を取るのでは? と思われるほどでした。

 しかし、ナンバー2には頭が上がらないらしく、時々追い回されては、他の馬に助けてもらう始末。

 そして、乾草を食べる時には、お世話になったその馬を追い払って「これ、全部オイラんだからな!」と耳を伏せるのです。

 やれやれ、それでも、馬の世界は成り立つのですから、ちょっと人間の世界と違いますね。

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