第28話 論功行賞


 俺はボルギアスの領地へ進軍し、各都市を取り返した。


 と言ってもすでにボルギアスについた領主たちは、都市から逃げ出していた。親元のボルギアスの軍が壊滅したので、勝ち目がないと考えたのだろう。


 ほぼ全ての都市を無血開城、僅か一週間でこの国の領地を全て取り返すことができた。


 もちろん一週間なのは、俺の天馬陣の機動力の高さのおかげもある。普通の騎馬陣なら倍以上はかかっただろう。


 山とか川を飛び越えられるのは偉大だ。便利過ぎる。


 そうして俺は王都に戻ってきて、改めて玉座の間でセリア姫と対面していた。


 なお玉座の横にはリーンが立っていて、俺をかなり睨んできている。


「フーヤ、よくやった。これで国は元通り……とはいかぬがな」

「でしょうね。ボルギアス陣営に与した者がほぼ出て行きましたので、統治する人材が全く足りていないはず」


 なんだかんだ言っても、ボルギアスはいままで配下を使って土地を運営してきたのだ。


 その配下がほぼいなくなったら、内政官が足りなくなるのは自明の理。ぶっちゃけ俺はこの状況を狙っていたところはあるけどな。


 これからセリア姫を守るのなら、獅子身中の虫はいらない。ボルギアス陣営は国内から一掃したかった。


 一時的に国の政務が大変になってしまうが、そこは手術の痛みとして我慢するしかない。問題を治さずに放置したら、後々大問題に発展してしまう。


 ちなみにボルギアスだが、本人は王都の広場で磔にされている。明日辺りに処刑する予定だそうだ。


「……問題は山積みだな。しかしこの状態で、また災害が発生するとマズイな……また鬼や亡霊や竜巻などが出てきたら、今度こそ大きな被害になるやも」

「ご安心を。もうそういうのは出てこないでしょう」

「ほう? なにか根拠があるのか?」


 リーンは訝し気な顔をするが、俺は首を横に振った。


「第六感です」

「おい」

「すみません。ただそんな災害相手となると、仮に国が万全の状態でも備えは難しいです。起きたらその時で考えるしかないでしょう」


 鬼とか幽霊とか竜巻とか、そんなもの警戒していたところで防ぐの無理だ。


 まあそもそも巨人で四災は終わりなので、次は起きないので大丈夫なのだが。


「……まあその通りか。災害については、ひとまず考えないでおくしかないな……流石に対策を講じている余裕はない」


 切り替えが早いな。確かリーンは内政官としては結構優秀だったはずだ。


 念のためにステータスを確認しておくか。



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リーン・メルヘン


攻軍:LV42

防軍:LV51

内政:LV83

魔軍:LV59


スキル

『内政上手』

(内政↑)

『忠義の臣』

(王を裏切らない)


兵科陣形

『剣陣』

『弓陣』

『魔導陣』


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 リーンは完全な内政官タイプだ。どうやらゲームと比べても能力値は変わっていないようだ。


 彼女に戦闘能力はあまり期待できない。どうしても頭数が足りない時に、出陣してもらうくらいだろう。武将としては中の下、もしくは下の上あたりの強さだ。


 ただ彼女は内政LVが高いので、政務をやらせる分には優秀な方だ。綾香には歯がたたないが。


「フーヤ。貴様が進軍している間に、今回の貴様の活躍に対する恩賞を決めておいた。女王陛下が直々にお告げ下さるので、心して聞くがいい」


 リーンは一歩下がって、セリア姫に頭を下げた。


「こほん……フーヤ・レイク。貴方の活躍はすさまじいものでした。奸臣ボルギアスを討ち破り、この国の危機を救い……そして私も助けてくださいました」


 俺は震えていた。


 セリア姫が! とうとう俺の名前を正しく呼んでくれた! 


 もうこれだけで頑張ったかいがあるな! 


「つきましてはその労に労うため、今までボルギアスの所有していた土地の六割を貴方に渡します」


 六割となるとかなりの領地だ。


 なにせボルギアスはこの国のほぼ半分を支配していた。奴は当然ながら権力を持ちすぎていたのだ。


 その六割をもらうとなれば、俺にも相当な領地を渡すことになる。


「よろしいのですか? そこまで土地を頂いてしまうと、王族と私の権力にあまり差がありませんが」

「構いません。私は貴方を信じています」


 セリア姫は俺の問いに笑みで返してきた。可愛い!


「……これまでの活躍を考えれば、かなりの恩賞を渡す必要がある。それに貴様がもし敵に回れば、この国は終わりだからな。裏切るならとっくに裏切っているだろうというのもある。将来のことを考えると気が重いがな……」


 リーンは少し顔をしかめている。


 本当はそこまで褒美を渡したくないけど、これまでの活躍や現状を考えると仕方ないと言ったところか。


 実際、この国から俺がいなくなったらすぐ滅ぶだろうなぁ……周囲は敵国だし。


「だが! その分だけ責任は増えるぞ! ちゃんとこれからも女王陛下に忠義を尽くし! また必要以上に近づかないように!」

「もちろん忠義を尽くさせて頂きます!」


 俺がセリア姫を裏切るなどあり得ないからな!


 でも必要以上に近づくかもしれないけど!


 リーンは俺をすごい形相で睨んできてる。たぶん近づかないことへの返事がないからだろう。でも知らん。


 さてこれからが大変だ。この国は四方を敵国に囲まれていて、この国の荒れ具合なら攻めてくるかもしれない。


 そうなれば俺が頑張って撃退しないとダメだ。


「フーヤ。これからもよろしくお願いしますね」


 俺は今後のことを考えながら、セリア姫の可愛い声で幸せになるのだった。


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